運命のつがいと初恋 ④

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 自室の扉を開こうとしてふと、せっかくだから東園にも見せたいなと思う。  きっと凛子のプレゼントに目を細めるだろう。へえ、と微笑む顔が目に浮かぶ。東園の優しい表情は陽向をほっこりさせる。ああいう顔は好きだなと思う。いや、そういう好きじゃなくて、好ましいという意味で。  自室から、と言っても最近はほぼ着替え置き場と化しているが、東園の部屋へ行き先を変え、陽向はそちらの部屋に入った。  入った瞬間、部屋に漂う匂いに眩暈がする。陽向は目を閉じてその場に座りこんだ。  これは、やばい。  三度目ともなるともう分かる、発情期が来てしまった。  深呼吸するたび東園の匂いが身体に入ってきて辛い。皮膚が服に触れるのも刺激になって息が上がる。どんどん身体が熱くなってくる。  東園の予想が的中した。  発情期は陽向にとってとても怖いものだ、前回も前々回も、とても辛かった。今回だって、東園が相手をしてくれると言うけれど仕事だってあるしどこまで付き合ってくれるか分からない。自分の身体が普通じゃなくなるのは不安でしかたなく、お願いだから来ないで欲しいと心底思っていた。  発情期だからさっきのように待っていても回復することはないだろう。  陽向は脂汗を額に浮かべながら凛子からのプレゼントを何一つ乗っていない東園のデスクの真ん中に置いた。  階下では三浦が夕食の準備を始めているどろうけれど、陽向は手伝いに行けそうにない。  だってもう、身体がαの匂いを欲している。  心の中で駄目だと陽向の一部が叫ぶけれど、もっと欲しくて堪らないのだ。  こないだもやってしまったよなと思いながらも欲に抗えず、ウォークインクローゼットの中から東園の匂いが強いものを引き出していく。  両手に抱えられない程の衣類をぽろぽろ落としながらベッドへ運ぶと陽向は寝転がって洋服の山に顔を突っ込んだ。  もう溶けてしまいそう。急激にせり上がってくる性欲に身体が震える。  震える手でスウェットのポケットからスマホを取り出し東園のアドレスを呼び出した。  苦しい、今すぐ帰ってきて欲しい。でも、こんなことで電話するって非常識なのかも。 通話ボタンを押そうとして陽向は指を止めた。夜には帰ってくる、数時間の我慢だ。  陽向はスマホをベッドの端に置き東園の枕と下着に顔を埋めた。 「は、……ううぅ、う」  我慢だと思うのに苦しくて漏れ出る声が抑えられない。身体が熱くて涙が出てくる。
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