運命のつがいと初恋 ④

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 後ろはなかなか難しい、でも前なら陽向でも弄れる。  少しは欲を出しておかないといけない気がする。口から吐き出してしまうのでは、と思うほど身体の中で性欲が渦巻いているから。  しょうがないことだ、発情期だから、そう自分に言い訳をしてすでに勃起しているそこに手を伸ばした。  熱く硬く、そして触らなくても先端から白濁を零していたようで表面が濡れている。 「あ、」  ただ握っただけなのに自分の手なのに恐ろしく気持ちがいい。敏感な先端は下着に当たるとその刺激で更に硬くなる。  数回ゆるく擦ってみると、中から押し出されるように白濁を溢し始めた。溜まったものが出てしまうまで、びくんびくんと身体が余韻に震える。射精欲が一旦満たされ、苦しさを少しだけ消してくれた。  手のひらに流れた白濁をベッドサイドのティッシュで拭き陽向はまた布団の中に引っ込んだ。服の山の中で大きく息をつく。  しかし楽になったのはほんの数分で、急速に蓄積される性欲に吐息が甘くなる。  あんまりすると、あとで皮膚が擦れて風呂のお湯でさえ刺激で痛くなる。表面が濡れているからまだ擦れが軽減されている気がするけれど。  ぎりぎりまで我慢しようと思いつつ、このやっかいな第二性を厭う気持ちに歯噛みする。  もう、本当に嫌だ。  近代以前はΩの自殺者が多かったという。薬も無い時代、この苦しさを耐えることも、顔も知らない他人に犯されることも多かったはずだ。  月に、人によっては数ヶ月に一度、必ずくる地獄に見切りをつけたくなる気持ちも理解できる。  はあはあと息を荒げ、また我慢の限界が見えてくる。  一度白濁を吐き出したくらいでは萎えられないそこに手を伸ばす。 「ああ、やっぱりか。早く帰ってきて良かった」  近くで聞こえた声に東園の服に顔を埋めていた陽向はゆっくりそちらへ顔を向ける。  東園、帰ってきていたのか、全く気がつかなかった。  鼻と口が服から離れると東園の匂いを強く感じ取れる。 「か、お」 「辛そうだな」  東園は陽向に顔を近づけると目元に溜まった涙を指で拭った。  ネクタイを緩めながら「少し待っててくれ、シャワー浴びてくる」と告げ東園は身体を起こし離れていく。  いやだ、と強く感じる。  離れたくない、今すぐ抱き締めて欲しい。    
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