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凛子が東園の実家で暮らすようになり一ヶ月程経つ。
陽向のシッター業務は当然お休みだ。というわけで、陽向はただいま三浦の助手として家事をして過ごしている。
さすがにシッター業が休業なので給料は受け取れないと断ったが、三浦の助手だからと振り込みは停止されていない。
マンションの解約のため片付けに通ったりもしていたから、給料をもらえるほど家事もしていないのだけど。
使った碗を洗っている陽向の背後に立った東園が陽向の後頭部に顔を近づける。
「あー、陽向の良い匂いがする」
「ちょっと、」
まだ食器洗いの途中だというのに、東園は絡みついてくる。
最初は鼻を押し当て匂いを嗅いでいただけだったけれど、それがキスに代わって陽向は手を止めざるをえない。
唇を吸われ舌を絡めているとだんだんそういう気分になってくる。すでに硬くなったそこを押し当てられ腰の奥が熱くなる。
「……んっ、ちょっと」
肩で背後の男を押してあとちょっとの作業を再開すると、今度は抱きついてきた。
陽向より大きい東園に覆われてなんだか温かい。
「馨、疲れてるんじゃないの」
食器洗いが終わり手を拭きながら背後をちらりと見る。
「疲れてるから余計したい」
「そうなの」
首に吸い付く東園は服の下に手を入れ陽向の腹を撫でる。
毎日のようにこんなことをしている。
もう発情期も過ぎた、練習も必要ないのに。
でも陽向は発情期でもない、いま、東園に触られて嫌だと思うことはなく、多分喜んでいる。
発情期のさなか、陽向は東園に愛していると言われた気がする。でもほとんどの時間、夢うつつの状態だったからはっきりしないのだ。
現実ならいいけれど、もし夢の中で、自分が作り出した言葉だったら怖いなと思う。
だってそれって、陽向が言って欲しいと思っているわけで。それはつまり。
腹を撫でていた右手が陽向の性器をつかみ、もう片手が尻の合間を撫でる。
「んっ、あ、」
「上に行こうか」
そんなふうに囁かれたら,嫌とは言えない。東園がαで、陽向がΩだからだろうか。
いや多分違う。東園だからだ。
陽向が頷くと、東園は陽向と向かい合わせになるように身体を回してぎゅっと抱きしめた。
見上げると嬉しそうな表情の東園が陽向の唇にキスをした。
こんなことは初めてでよく分からない。でももし、東園が陽向を愛しているならこんなに嬉しいことはないと思う。
いつの間に、そんなことを思うようになったのだろう。
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