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差し出されたので手を取った。繋いだ手がお互い熱い。
階段を登っていく間も目が合えばキスをしてなかなか寝室へたどり着かない。
離れたら寂しくてつい東園を目で追ってしまうし、東園が振り向くと胸が熱くなる。
まさか自分が、まさかαと、とは思う。けれど、この感情は恋をしてるってことじゃないかなと思う。
愛してるって言われたいなんてこちらが好意を持っているとしか考えられない。
いい印象のない同級生で、雇用主で、運命のつがいで、発情期の相手で、おまけに陽向にとっては初めて好きになった人。東園の形容詞が増えていく一方だ。
「陽向」
呼びかけられて顔を上げるとふっと目元を緩めた東園が絡みついてきた。
あともうちょっとで部屋なのに。
でも、胸がじんわり温かくなる。
東園の背中に手を回し自分よりも大きな身体をしっかり抱きしめる。
これってすごく幸せかもしれない。
こんなに毎日べたべたしているのだから、やはり東園は陽向に愛してると言ったんじゃないかなと思う。好きな人に愛していると言われたんだから、これは両思いなのかも。
上流階級のα、そして人目を引く容姿を持つ優しい男。対して平凡な金も権力も何にも無い自分。釣り合ってはないなと頭の片隅でちょっと考える。
「陽向、なにか考えてる?」
陽向の顔を覗き込む東園に首を振ってみせた。
今はごちゃごちゃ考えるより好きな人と触れ合っていたい。
自分で思ったことなのに好きな人だってと突っ込んでむふふと笑ってしまう。
「なんだ楽しいことか」
「うん」
にやにやが止まらない。
見上げた東園も陽向の幸せが移ったみたいに優しく笑っていた。
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