運命のつがいと初恋 ⑤

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 東園に連絡するのをためらう自分がいる。  好きな人が出来たと学生みたいに浮かれていたせいかもしれない。  膨らんだ気持ちが急激にしおれていくのが分かる。  連絡先の名前を見ながらなんて迷惑なことだろうと思う。  勝手に好きになられて裏切られた気になられて。  東園は陽向の発情期の相手をしてはいるが、惚れたのは自分。  これは確かに迷惑な話じゃないかと思う。  店先に立ったまま東園と三浦に終わったことを連絡した。さあ切り替え切り替え、陽向は自分の頬をパンと叩いた。    陽向が家の前で車を降りたとき、まだ家に明かりが点いていて驚いた。 「ただいま。遅くなってすみません」  玄関を開くと煮物のいい匂いがした。  リビングに入るとエプロンを畳んでいる三浦が「お帰りなさい」と陽向に笑いかけた。 「さっぱりしましたね。短い髪もよく似合っていますよ」 「そ、そうですか。ありがとうございます」  切ってくれてる間ぼーっとしていたので、いつもより前髪が短くなっていた。  小高はずっとこの長さにしてみたかったらしく、上の空だった陽向が頷いたのでこれ幸いに好きなように切ってくれたのだが正直似合っているかは分からなかった。  三浦からも好評ならまあいいかと思う。  短時間でいろいろ考えすぎたので、どっと疲れてしまった。  しかし三浦の穏やかな笑顔を見ると力が抜けていく。お母さんみたいな雰囲気があるから自然とリラックス出来るのかもしれない。  三浦は陽向の帰りを待っていてくれたのだろう、陽向が帰宅するとすぐに帰って行った。  陽向が風呂から上がるとスマホに東園から遅くなるから先に寝ていて、とメッセージが来ていた。  ほっとすると同時にもしかしたらほか何軒か、ここのような住処があって、そこに帰っているのかもしれない。  陽向の知らない家を持っていても、東園が陽向に報告する義務はないしそこに誰かいてもそれは陽向がどうこう言うことではない。なのに考えると気持ちが悪くなってくる。  本当に気になるなら聞いてみればいい。そう思うのだけど肯定されたときの自分の気持ちがどうなるのか想像が出来なくて怖い。泣いてしまいそうだし、怒りだすかもしれない。自分の事なのに全く分からない。  それに陽向にも発情期の相手をして貰わなければならないという事情もあり、いろいろ突っ込んでもうしないと言われると実際困る。  まず、発情期を他人の力を借りず乗り切れなければならないのかも。  薬を変えて合うのを早急に探さないと。  陽向はもやもやを抱えたままソファの上で膝を抱え、ため息を零した。
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