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相変わらず一般受付は混み合っているようで、広い待合スペースの椅子はポツポツとしか空いていない。皆手元のスマホを見るか、受付上にある電光掲示板を見上げ自分の番号を呼び出されるのを待っている。高齢者に幼児、様々な人の中で、陽向も四人掛けの待合椅子に座った。渋滞込みの出発時間にしてしまったから、予約時間より三十分も早く着いてしまった。
ぼんやり受付の様子を眺める。
まず最初に解決しなければならない問題は、自分の発情期だ。
適合する薬を早急に見つけ、以前のように相手がいなくてものりきれるようにならないといけない。
東園との関係は、ずっとある。近づかれると、身体が反応してしまうし、気持ちも傾く。
もし、今度の薬が効いて、発情期に相手をして貰う必要がなくなれば、そのあと陽向はどうするつもりなんだろう。
東園には恋人がいる、かもしれない。それを陽向はずっと聞けないでいる。
自分はこんなに意気地なしだっただろうか。
いいじゃないか、別に恋人がいても、自分たちは交際をしているわけではない。
東園は陽向を裏切ったわけではない。嘘をつかれていたら、きっと悲しい。
ただ、嘘すらつく必要のない関係と考えると、これは、かなりむなしいことだと感じる。
もしかしたら陽向は大きな間違いを犯したのかもしれない。
生物としてつがいとなるのが望ましい相性であっても、心が繋がっていないのに身体だけなんて、どんなに苦しくてもしてはいけないことだったのではないか。
あのときは身体が本当に辛くてどうしようもなかったけれど、今度は内臓が冷凍庫に入れられたみたいに寒い。
ぴぴとスマホが鳴り、陽向はびくりと震えた。
慌ててカバンから取り出し見ると、予定に入れていた検診の時間になっていた。
陽向はゆっくり立ち上がるとΩ病棟へ歩き始めた。
「そうですか、今回も薬は効かなかったと」
小森がカルテに目を向け「うーん」と唸る。
「他の薬を試したいです。なんとか効くものを見つけないと」
「そうですね。前回は……こちらにはいらしてないですね」
目の前に座る小森がカルテから顔を上げ眼鏡の奥から陽向を見る。
黒い瞳がまっすぐこちらを見るので陽向はうろうろと視線をさまよわせた。
「あ、それは、はい。その、大丈夫でした、なんとか」
恥ずかしくて性交をして落ち着かせたとは言えなかった。相手は医師なのに。
「先生お願いです、強い薬でいいので、次は絶対に効くものを処方してくれませんか」
「……三田村さん、まず身体の様子をもう一度確認しましょうか。今の調子に合わせないといけないので」
小森がカルテに目を落とし、陽向は「はい」と呟いた。
後ろに控えていた看護師が、「じゃあこちらへ」と陽向に経つよう促した。陽向は看護師について診察室を後にした。
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