運命のつがいと初恋 ①

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 車は滑るように夜道を進む。  駅近辺から住宅街へ入って確かに街灯は減ってきた。  緩やかな坂を登って暫く走ると歩道に面する邸宅の面積が明らかに広くなっている。  暗いから家自体はよく見えないが、きっと立派なのだろう。車は一角でスピードを緩め、車道に面した駐車場に停車した。四台は停められそうな広いガレージの裏に東園の自宅であろう建物がある。自分の部屋はこのガレージにすっぽり入るだろうなぁ、いや、考えると空しくなるからやめよう。  北見に促されるまま車を降り、ガレージ脇の門扉を通り過ぎる。庭の端にライトが配されていて暗くても一般的な庭の広さではないのが分かる。キョロキョロ辺りを見回しながら陽向は北見の後ろに続いた。 「いらっしゃい。北見すまない、ありがとう」  北見が呼び鈴をならす前に玄関扉が開いた。東園は先ほどのスーツからVネックのブラウンセーターにスリムパンツに変わっていた。陽向は家に帰ると襟のよれたトレーナーに安いハーフパンツだからずいぶんお洒落な部屋着だなと思う。  北見が玄関扉を押さえて東園がどうぞと陽向に中へ入るよう促す。 「北見さんありがとうございました」  陽向が頭を下げると北見は強面に笑みを浮かべた。笑うと少しだけ取っつきやすくなるなと思う。北見は東園と少し言葉を交わして一礼すると玄関を閉めた。 「改めてありがとう、上がって」 「お邪魔します。あ、凛子ちゃんは?」 「リビングにいるよ、あれから病院へ行った」 「どうだった?」  二人並んでも余裕のある広い廊下だ。東園はすぐ脇の扉を押した。 「色々と調べてもらったけど、何も反応出なかったよ。風邪だろうって結論だ」 「そうなんだ。凛子ちゃんごはん食べたの?」 「まだだよ」  うなずきながら陽向は東園に続いて部屋へ入った。広いリビングに思わずわっと呟きが漏れた。奥にキッチンがあり、ダイニング、そして陽向のいるリビングと続いている広々とした空間。  壁掛けの大きなテレビとL字の大きなソファ、その間にガラスのローテーブル。ソファには凛子の姿があり、背もたれの右端に東園の背広とネクタイが掛けてある。  ハウスメーカーのカタログに載っていそうなリビングだけど、テレビと窓までのあいだにある木製のキッチンや子供用のカラフルな三段ボックスが幼児の家庭らしいなと思う。康平の家もこんな感じだった。  凛子は昼と同じワンピースで猫のぬいぐるみを抱きしめている。さらさらの黒髪が幼児特有の丸い頬にかかっていてくっきりとした大きな瞳が人形めいている。 「もしかして帰ってきたばっかりかな? こんばんは、凛子ちゃん。病院行ってんだってね、偉かったね」  凛子は陽向を見て小さく頷いた。  
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