運命のつがいと初恋 ⑤

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 どんな連絡でも今はあまり触れたくないんだけれど。取り出して見ると、康平からの連絡だった。 『既読無視っていうんじゃないんですかー。新しい仕事そんな忙しい?』  文面を見てはっとする。すっかり康平から連絡が来ていたことを忘れていた。 『あああ、ごめん。大丈夫、そんなに忙しくない』 『お、返信はやっ。夜は飲みが入ったけど今会える感じ?』 『会えるよ』  康平は明日の勉強会のため前泊する事になったらしく遠いと迷いそうだからと、「ホテルの近くで目に入ったカフェ」を指定した。  もちろん陽向の知っている店ではなく、検索してみると小洒落たカフェでここから一時間弱だ。  確かに康平の泊まるというホテルの斜向かいだった。  陽向はここからバスと電車で移動となる。   連絡を返していなかったのだ、せめて早く着かないと。陽向は根の生えそうになっていた尻を椅子から引き剥がしてよろよろと歩き始めた。  病院の広い駐車場を抜け、歩道に繋がる小道を行く。  しばらく歩いて敷地から出ると、歩道の約50メートル程先にバス停が見えた。  一人、おばあさんがバス待ちをしている。   陽向は心持ちゆっくり歩き、ゆっくり歩きすぎて自分を追い越した目的のバスに間に合うよう走る羽目になった。  平日だからか乗客は少なく、陽向は一人がけの空いた椅子に座ってお腹に手を当ててみた。走ったからといって痛くなるわけではなさそうだ。  しばらく車窓の向こうをぼんやり見ていた陽向はふと三浦に遅くなると連絡しなければと思い出した。  陽向はバックからスマホを取り出し、三浦に友達と会うので遅くなる、と連絡してまたバックに戻した。  小銭を確認している間に降車するバス停に着いてしまい、あわあわしながらバスを降りた。  乗ってきたバスのエンジン音を聞きながら、焦って胸がドキドキしたままの陽向はふっと息をついた。こういうドキドキも赤ちゃんに悪影響なのでは、と思いながら深呼吸を繰り返す。落ち着いたところで今度は駅の改札を目指し歩き出した。  今まで全く気にならなかった自分の行動がいちいち子どもにとって大丈夫なのか気になってしまう。  小森の話をしっかり聞いていれば良かったと後悔する。  あの時、驚きでなにも耳に入ってこなかった。小森はなにか説明していたので妊婦へのアナウンスはちゃんとしてくれていたのだろう。  頭は色々なことでごちゃごちゃしているが、気持ちはお腹にいる赤ちゃんを大事にしなければと強く思っている。
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