3293人が本棚に入れています
本棚に追加
「なんで東園? 連絡取ってたの、おまえら」
「まさか。たまたま勤務してた幼稚園に東園が姪っ子ちゃん連れてきたんだ。偶然会ってびっくりしたんだけど」
「偶然ねえ」
康平は苦笑いして「そうか、東園か」と呟いた。
「でもなるほど、東園なら色々納得だな」
康平は二度頷くと残り少ないアイスコーヒーを飲み干した。
「なにが納得?」
「あの、キングオブαな東園なら眠っていたΩをたたき起こすのも可能だろうなってそういう納得」
「なにそれ」
大袈裟な言い方に陽向は肩をすくめる。
「α以外の人間には分からないだろうけど、α同士ではあるんだよ。こいつは自分より上か下か、本能で分かる。あいつは別格」
「そうなの」
陽向が知る東園は子ども好きで優しい男だ。康平もそうだ。学生の時は馬鹿もやっていたが、つがいを見つけて落ち着き、いいお父さんになった。康平に比べて東園が上だ下だ、なんて陽向には感じたことがなかった。
「あと俺がどうして嫌われてたのか分かった気がする」
「え、嫌われてた? 康平、東園と喧嘩したことあったっけ?」
自分もだけど康平も東園との接点は薄かったはずだ。二年生の時に一度だけ一緒のクラスだっただけで同じ部活でもない。
Ωの陽向とは違い康平は同じαなのにどうしてなのかな、と思う。
「いやないよ。でもあいつすれ違うときいっつも俺のこと睨んで、何かしたっけな~と思ってたけど陽向のせいだったんだな」
聞き捨てならない言葉に丸くなっていた背を伸ばす。
「なんで僕のせいなんだよ」
Ωだからと言うつもりか。唇を突き出した陽向に康平は身を乗り出して「東園、陽向が好きなんだよ」と耳打ちした。
「は?」
「気づかなかったな。まあ、そう考えればホント腑に落ちるわ。ほら俺たちほぼ一緒にいただろ。好きなΩに纏わり付くαがいたらそりゃ嫌うわな」
最初のコメントを投稿しよう!