運命のつがいと初恋 ①

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「こんばんは。夕方幼稚園で会ったの覚えている? 三田村陽向です。陽向せ、ええとひなた、うーん、ひーちゃんが呼びやすいかな」  そばに屈んで凛子の顔を見る。頬が赤く目が潤んでいる。これは早く寝かせた方がいいかもしれないなと思う。 「凛子ちゃんお熱は? あ、アレルギーある?」 「アレルギーはないな。熱はさっき計ったが夕方より上がっていた」  見た感じ、38度は超えていそうだ。陽向は紙袋をソファの横に置き立ち上がると東園にコンビニで買ったビニールの中身を渡した。プリン、桃ゼリーどちらもに食べられると聞いてほっとした。 「おかゆがあるはずだ。家政婦に頼んだから」 「そうなんだ、じゃあ食べられるものを食べて、もう寝た方がいいんじゃないかな」  家政婦さんがいるなら、別に手伝いに来なくてもよかったんじゃないかと思う。見る限りもういないようなので、陽向は今夜のサポートと考えているのかもしれない。  凛子がゆっくりとソファに寝転がり、慌てて東園と陽向は凛子の顔をのぞき込んだ。 目は開いているが呼吸が荒い。 「ちょっと見ていてくれるか?」 「うん」  言うなり立ち上がった東園は階段を駆け上がり、あっという間に降りてきた。 「悪い、これに着替えさせてくれ。あとブランケット」 「分かった」  東園はピンクの服を投げ渡してきた。広げると襟元に飾りリボンが付いたピンク地に白い水玉が散ったパジャマと下着だった。 「ちょっとキッチン借りる」 「ああ」  和室に入った東園の答えを聞いて陽向は持ってきた菓子の紙袋からタオルを取り出しキッチンで濡らし固く絞った。お風呂は無理でも顔と手足くらいは拭いてあげたい。 「凛子ちゃんちょっとごめんね。お着替え頑張ろうか。まずお顔と手を綺麗に拭こうね」  横になった凛子の顔を撫でるように優しく拭き、タオルを折り手を拭き靴下を脱がせ足も拭く。手足が熱い。  幼児はΩが本能的に分かるらしく、相手が男性でも気を許しやすいといわれていて、陽向も実際働いているときΩであることが有利に働くことが多かったように思う。  しかし凛子とは今日あったばかりだ。着替えの手伝いはさすがに嫌がるかもしれない。  嫌がったらすぐやめようと思っていたが、その気力もないのか凛子はされるがままになっている。具合の悪いときにあまり身体を動かすと辛いだろう、陽向は手早く着替えさせ、ブランケットを掛けた。  陽向は床に座って凛子の頭をそろりと撫でる。凛子はゆるゆると首を持ち上げ陽向を見た。
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