運命のつがいと初恋 ⑤

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「つがいは惹かれあうというから再会したら陽向も俺に気付いてくれるものだと思ってた。でも陽向にはすでに両親公認のつがいがいると知ってショックだったな。しかも目も合わないくらい嫌われてたから」  東園は陽向の手を包むようにそっと両手を添えた。 「自分の感覚は間違いないと確信してるけど、話をしたくても避けられて辛かったし、佐伯と常に一緒にいる陽向を見たくなくて自分が勘違いをしているだけで、つがいは別にいると思うことにした。だからこっちに戻って探した」  陽向を縋るような目で見上げる東園の視線に陽向は気まずさを感じそろっと目を伏せた。  中学の時、陽向は匂いがきつく感じて東園を遠ざけていた。Ωを嫌っているようだったから余計に避けていたけれど、話し掛けてみればよかったのかな。確かに苦手意識があったから心苦しい。 「陽向の知った情報の半分はおそらく事実だ。探したけれど陽向の他につがいだと思える人はいなかった。だから最後に一度、本当に自分は正しかったのか間違っていたのか確認したくて、陽向を探して会いに行ったんだ。陽向と再会する一年は前から恋人はいなかったし、今も他に誰かいるなんてことはない。これから先も俺には陽向だけだ」  言い募る東園に胸がきゅっと震える。包む手に力を緩め、陽向の指にキスをした。想像以上に東園はつがいを求めていたようだ。康平もαはΩに執着すると言っていた。 「僕だけなら嬉しい。凄く嬉しいよ。でも馨に比べて僕は平々凡々な人間だけどいいのかな、つがいだから気にならない?」  しかもつがいだって気が付かないほどには鈍感だし、と陽向が続けると東園が眉根を寄せた。 「陽向はそういうけど、俺からすれば陽向は最初から誰より輝いて見えたし、陽向を忘れようとしていた時も、気が付けば陽向の事を思い出して、会いたくて、一目見たくて苦しかった。今、陽向が近くにいてくれてるけど、もしかしたら夢を見てるだけで覚めたらいないかもしれないと思うときがある」  え、そんなに、と密かに驚く。病的な思考じゃないかと心配になる。 「ちゃんといるよ、大丈夫」 「ああ、そうだよな。それだけ陽向は俺にとって特別で代えのきかない存在なんだ。つがいだからかもしれないし、そうじゃないかもしれない。陽向がいいんだ、陽向じゃないと駄目なんだ」  熱っぽく言われそこまで思ってくれていたのかと嬉しくなる。  何を迷って悩んでいたか思い出せないほどじわじわ幸福感が満ちていく。 「そんなふうに思ってくれてるなんて知らなかったよ。もっと馨の事を知りたい」  掌のリングを嵌め直して東園の手を握る。
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