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「大好きだよ。ずっと一緒にいるから」
安心してと続けようとして唇を奪われた。優しく触れたあと、甘く絡み合う深いキスがくる。
ゆっくりとベッドに倒され、陽向は愛する男の肩に手を回し引き寄せる。角度を変えながら長く唇を合わせていると気持ちが高まってくる。
東園の手が陽向のシャツに入ってきた時、自分の状況を思い出し、唇を振り切って「だめ」と忍び込んだ手を止めた。
「どうして?」
陽向の頬を撫でながら眉尻を下げる東園を押しのけ陽向はベッドの縁に座った。
ため息を零して陽向の隣に座った東園に顔を向け陽向はそっと腹に手を当てた。
「昨日もしたし、だから大丈夫だと思うんだけど、先生にちゃんと聞いていないからやめた方がいいかなと思って」
「ん? なんだ、どこか悪いのか?」
焦って顔を近づける東園に陽向は首を振った。
「違うよ。子どもが出来たんだ」
はっと息を吸い込んだ東園が陽向の手を強く握った。
「そうか、そうか……ああ、そうだよな、可能性があるのに気がつかなかった。そうか」
反応の薄い東園に陽向は少し不安になる。
妊娠が嬉しいならもっと喜ぶような。もしかして子どもは欲しくなかったのかもしれない。
凛子と接する東園を見る限り、子どもは好きそうだったのだけど。
「ええと、僕はその、産もうかと思っているんだけど、もし馨が望んでいないなら」
「おいちょっと待って、望んでいるさ。二つの幸せがいっぺんに舞い込んできたから驚いているだけ。陽向がいいなら是非産んで欲しい」
握った手を引き唇を寄せたあと、東園は陽向を強く抱き締めた。
「人生で一番幸せかもしれない」
ぼそっとそんな事を言うから陽向は笑ってしまう。
「幼稚園のお母さん達が、出産は本当にきついけど、我が子を初めて抱いたとき幸せ過ぎて泣いたって言ってたし、初めてママって言われたとき感動して泣いたって言ってた人もいたよ。一番幸せはすぐ更新されるかも」
「そうだな、きっとそうだ」
陽向を抱きしめている腕の力が強くなり、少し苦しい。でも陽向にとって東園の腕の中は好きな匂いに溢れた自分の居場所だ。しっくりくる。
もし東園がたくさんのΩを囲っていたとして、東園と離れる選択をしたとしたら陽向はきっと恋しくて苦しい日々を送らなければならなかっただろう。
東園と別れる必要がなくて本当に良かった。ますます強くなるから陽向も同じように東園の身体に腕を回し力を込めた。強く抱き締めたのに、東園は嬉しそうに笑うだけだった。
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