運命のつがいと初恋 ①

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 近くになにかいる感覚。なんなのだろう、頬に当たるのはぬるい風。あ、吐息かも、と思い目をこじ開けた。  目の前に黒目の大きな瞳と黒い髪。白いまろやかな肌。 「かおちゃん、ひなたん起きた」  上体を起こしながら目をこする。  ここは、ここって、あ、東園の家かとぼんやり思う。 「あ、あれ、凛子ちゃんもう起きたの、おはよう」  ラグの上に座ってこちらをじっと見ている凛子に陽向は苦笑した。 「今何時だろう。ああ、すっかり寝ちゃってた、まじかあ」  ようやく自分の役目を思いだし、膝に乗っていた毛布を掴んで顔を覆う。高いところからふっと吹き出す声がして毛布の隙間から睨めあげた。 「起こしてくれよもう」 「あんまり気持ちよさそうだったから。上に部屋を準備してるから使ってくれ」 「いや、もう寝ないよ。てかいま何時?」 「12時過ぎ。凛子はトイレに起きたんだよ。さあまた寝ような」  頭を軽く撫で、東園は凛子の手を引いて和室へ入っていった。  そろっと和室を覗くと凛子が布団に入るところだった。明かりを落とした部屋の真ん中に敷かれた布団。いつもここに寝てるのかな。こんなに大きい家だ、自分の部屋がありそうだけど。  看病しやすいようここに寝かされてるとしたらちょっとかわいそうだなと思いながら寝そべった凛子と目が合ったので「お休み」と声を掛ける。 「ひなたん」  凛子が布団から手を出したのでちらりと東園を見る。布団のそばにいた東園が小さくうなずいたので陽向はそっと凛子の布団の横、東園の布団を挟んで対面に座り小さな手を握った。とても熱い手だ、甲を撫でると凛子はすっと目を閉じた。  すうすうと寝息が聞こえ始めてしばらくすると東園が目配せしたので二人で和室をそろそろと出た。 「凛子ちゃん、手がすごく熱かった。明日の朝、熱が下がらないようならまた病院行った方がいいかな。あ、明日は仕事なの?」 「休むよ、家で出来る事もあるから」 「そうなんだね」  陽向はソファに座り伸びをした。そしてキッチンに立った東園に「僕がここにいるから、寝てきていいよ」と声を掛けた。 「ごめん、手伝いに来たのに寝ちゃって」 「寝たってほどじゃないよ」  くつくつ笑いながら東園はティーポットにお湯を注いでいる。  湯気がふわっと立って、それを見てはじめて陽向は自分の身体が冷えていることに気がついた。 「なに淹れてるの?」 「紅茶、かな。いや、ノンカフェイン、フレーバーティって書いてある」  ダイニングテーブルに着くと目の前に白磁のティーカップが置かれた。甘い匂いがふわりと漂う。蜂蜜レモンだ。 「ああ、いい匂い。ありがとう」  目の前に掛けた東園は微笑んで同じティーカップを口へ運んだ。  なんだろう、トレーナー上下にティーカップでも顔立ちが恐ろしいほど整っているせいで様になる。不思議だ。
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