運命のつがいと初恋 ①

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「ああ、4つ上だ。俺が中学の時、姉は東京にいたから知らなくて当然だな」  それでは東園が中学当時、家族は別居していたことになるが。  東園家は謎が多いなと思いつつ、家庭の事情だ、突っ込んで聞くのはやめようと思う。 「お姉さん東園と似ているの?」  と聞いたところで陽向の腹がきゅうと鳴った。自分の腹を見て、顔を上げる。東園と目が合いお互いぷっと吹き出した。 「三田村腹減ってるみたいだな。なにか作ろうか」 「……なんかすみません」  東園がキッチンに立ったので陽向は凛子の様子を確認するため襖の隙間から和室をのぞき込んだ。さっきと向きが変わっているがちゃんと布団を着ている。  スマホを見るとまだ5時だ。起きるには早すぎる。そっと襖を閉めたあと、陽向はなにか手伝おうとキッチンに向かった。  東園はキッチンの真ん中でスマホ片手に突っ立っている。何をそんなに真剣に眺めているんだろう、なんかぶつぶつ呟いているし。  近づいて「どうしたの?」と聞くと、びくっと肩を揺らした東園はスマホを消した。 「いや、なんでもない」  明らかになにか調べていたくせに。じとっと見ているとみるみる渋面になっていく東園が「全く出来なくて」と呟いた。 「なにが」 「料理が」  東園は背後にある、ファミリー向けなのだろう、陽向が持っているのより三倍は大きいシルバーベージュの冷蔵庫を開いた。 「材料はあるんだ。家政婦の三浦さんが入れてるから」 「そうなんだ。家政婦さんがいるなら自分で作る必要ないもんね」 「いや、何もかも出来ないわけじゃないんだ。温めるくらいは出来るし、コーヒーは淹れられる。カップ焼きそばも作ったことある」  一歩近づいた東園がむきになって言うものだから陽向は堪えきれずぷっと吹き出した。 「ふふ、ごめん。馬鹿にした訳じゃないんだ、言い方が悪かったね。僕ならどうしても今食べなきゃって感じでもないけど東園はお腹すいた? もし食べるなら僕が作ろうか、目玉焼きくらいなら出来るから」 「じゃあ頼む」  陽向は頷いて、東園の横から冷蔵庫の中を眺めた。  確かにたくさん食材が入っている。卵もあるようだし、ソーセージ、ベーコンも見える。キッチンの棚に食パンもあった。あとなにか野菜があれば良さそうだと思う。 「下も開けていい?」 「ああ」  野菜室を見るとレタスやキュウリ、トマトもある。ご主人様も要望に添えるよう、きっちり揃えてあるのだろう。さすがだなと思う。 「すごいね、なんでもある。使うけどいい?」  真横に立つ東園が頷いたので陽向は調理を始めた。  目玉焼き、ベーコン、レタスとトマトのサラダは出来る。ドレッシングもあった。    キャベツに人参、玉ねぎもあるから、あとコンソメがあったらソーセージ入りのコンソメスープも出来そうだけど。  広いシステムキッチンの引き出しを開けていくと様々な香辛料の瓶が並んでいる小棚があり、そこにコンソメもあった。  スープを作っていると横で東園がうろついていて、正直ちょっと邪魔だなと思う。
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