運命のつがいと初恋 ①

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「三田村にはずっと家にいて欲しいと思ってる。以前は仕事で深夜まで手が離せないときもあったから、今後そういう事が無いとは言い切れない。だから朝や夜、凛子が寂しくないようにいてもらえると助かる。出来る限りないようにしているけれど、出張もないとも言い切れない。通いだと大変だし、夜遅くに三田村を帰すのは危なくて出来ない」 「ええっと、そんな危ないってほどでは無いんだけど」  発情期に薬を飲まず道をうろついていたら危ないだろうけれど密室ではない屋外はそれほど恐ろしさを感じた事はない。しかし深夜は別だし、東園なりにΩの陽向を気遣っての発言だろうから頭から反論するのも違うかなと思う。  東園が凛子とともに生活をする人を求めているのはよく分かった。 「ええと、なんて言ったらいいのかな、その、一緒に暮らすって、本当に大丈夫、かな」 「何が心配?」 「えっと、凛子ちゃんにとって僕の影響が大きくなりすぎないかなって。知らず知らずのうちに、凛子ちゃんに僕の価値観とか色んな思考が移っちゃうような気がして。僕と東園が似たような考えならいいのかもしれないけど、そんなことはないと思うし。身内じゃないから、そういうの大丈夫なのかなってちょっと心配。そこまで気にしなくてもいいのかもしれないけど、うーん、考えすぎ、かなあ?」 「いや、三田村は真面目だな」  抱っこに飽きてきたのか凛子が降りたがったのでソファに座らせた。 「俺は全く問題ないと思ってるよ。普段の三田村のまま、ここで暮らしてくれるだけでいい。価値観は俺達が分かり合えていればいいということだろ。暮らしていく中で擦り合わせられるものなんじゃないかな」  そういうものだろうか。他人と暮らしたことがないから分からない。 「えーと、ううん、じゃあ、試しにちょっと泊まってみて、でもいい? シッターもだけど、家族以外と暮らした事がないから、出来るかどうか正直分からない」 「もちろん」  破顔した東園を見ながら陽向は苦笑する。まあなんとかなるかな、同級生だから話はしやすいし。  とりあえずのシッターが決まりご機嫌の東園に凛子の体温を測り忘れていたのを思い出し、体温計を出してもらった。  これからここで、凛子と過ごすならばこういった小物の場所も教えてもらわないとなと思う。  凛子はやはり、昨日より熱が上がっていた。
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