運命のつがいと初恋 ②

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 妙に輝いて見えるガラスのショーケースに鮮やかなケーキとカラフルなマカロンが並んでいる。 「うわあ、綺麗」   店内は外観の雰囲気そのままに至る所にこびとや猫の人形が飾られ、本当にファンタジー小説に出てくる魔女や薬屋さんがひょこっと出てきそうだ。扉の横に大きなクリスマスツリーがあってその青、赤、黄、ピンク、緑の電飾がガラスに映っている。  バターのいい匂いとバニラの甘さをいっぱいに吸い込んではあと息をついた。 「身体の中がいい匂いで浄化された感じ」 「今まで汚れてたのかよ。ここ、来たいって言ってただろ」 「言ったかな、……あ、もしかして誕生日ケーキのところ?」  陽向の誕生日が先月二十日で、東園が会社帰りにバースデーケーキを買ってきてくれたのだ。  一人暮らしを始めてからというもの、当日に誕生日を祝う、なんてことなかったのでもういいのに、と言いながらもちょっと嬉しかった。  ホールケーキなんて何年振りかも分からないほどだが東園の買ってきたバースデーケーキは陽向のよく知っている生クリームにイチゴの乗ったものとは違っていた。  チョコケーキの土台にマカロンとフルーツ、砂糖菓子の小さなマーガレットが可愛らしく飾られていてその華やかさに驚いた。  その時、東園にどこで買ったのか聞いた気がする。行ってみたいとも確か言った。 「そう。ほらいろいろあるだろ」 「ホントだ。どれも可愛いね。あ、これこの間りんちゃんに買ってきたやつだ」  東園の指す先に、バースデーケーキと別に買ってきたウサギの形にデコレーションしてあるプリンがあった。  耳はクッキー、耳飾りに砂糖菓子のマーガレット、チョコチップの目、生クリームとフルーツで飾ってある見た目に可愛いプリンは凛子用で、夕飯後に出したら目を輝かせていた。  あっという間に食べてしまって、凛子はもう一個欲しいと東園にお願いしていた。  バースデーケーキは凛子には早いかもと今回は凛子が寝たあと、大人だけで食べたのだが濃厚なチョコクリームと甘酸っぱいフルーツが絶妙で陽向はこのケーキの大ファンになったのだ。陽向の食べたホールケーキは売れてしまったのかなく、生クリーム土台にマカロンとフルーツの乗ったケーキとベイクドチーズケーキがある。 「この間のケーキはないね。この時間だもんね。これ、このクマさんのプリンも可愛いな」 「ホールはないけどほら、ショートケーキはあるぞ。凛子はウサギが好きだから、ウサギが無難かな」 「確かに。この前のが良かったって言うかもしれないね」  店内はそう広くないが夕方だからか客は陽向達のほかにひと組だけ、ゆっくり見ることが出来て嬉しい。  しかし完売したケーキも多いようで隙間が目立つ。  ウサギのプリンとガトーショコラ、チョコのショートケーキ、三浦へのお土産としてマカロンを買って帰ることにした。
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