運命のつがいと初恋 ②

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「良くこんなところ知っていたね。お店の看板出てなかった」 「ここは高校の同級生が経営しているんだ。今日はいなかったけど」 「高校って、近く?」  東園が教えてくれたのは地方出身の陽向でも名前を知っている有名私立の高校だった。   確か学力が相当に高くないと入れない学校だったような。中学当時も東園はクラスで一、二を争う成績だったような気がするので当然と言えば当然かもしれない。  小道を引き返しながら店内にあったチラシを眺めていた陽向に東園は転ぶぞと声を掛けた。 「クリスマスケーキはさらにゴージャスだね。いろんな種類がある」 「なにか良さそうなのはあったか?」 「ん? もうすでに×が付いているのもあるね。人気店なんだ、すごいな」 「帰ってゆっくり見よう」  後ろから言われ陽向は渋々頷きチラシから目を離した。  夕食後お土産のプリンを見せると、凛子は「わあ、うさちゃん、かわいい」と声を上げ早くスプーンをくれと陽向をせっついた。 「りんちゃんこぼさないようにちゃんと持とうね」 「うん」  可愛いと甘味の誘惑では後者が強かったようで、凛子は貰ったスプーンで早速食べ始めた。 「りんちゃんホントこのプリン好きだよね」 「美味しいか?」 「うん」  隣で見ている東園にコーヒーとガトーショコラを、自分の席には紅茶とチョコのショートケーキを置いて急いで座った。 「あのお店のクリスマスツリーも良かったよね」  いただきますと手を合わせて一口。陽向がほうとため息をつくと正面の東園が吹き出した。 「そんなにか」 「このこってりの一歩手前なクリームが好きなんだよね。スポンジもちょっと違うの。なにか、なんだろう、なにか入ってるよね。馨の友達すごい。これかおちゃんのお友達が作ってるんだって、すごいよね」 「すごいねー」  凛子は口の周りにクリームとカラメルを付けたままにっこり笑う。  そんなところも可愛くて、きゅんとくる。あとで拭いてあげようと思っていると、「俺も料理覚えるかな」と東園のすねた呟きが飛んで来た。 「老後にでも始めたら? 馨いつも忙しいじゃん」 「先すぎるだろ」  なにかと競いたがる性分なのかなと思う。  何にも動じなさそうな、いかにもαな見かけと子供っぽい言い草とのあいだにギャップがある。  こういう所もモテる一因に入りそうだなと思う。東園を知る前は羨ましかったが、最近はそう思うことも無くなった。モテて当然だなとつくづく感じるのだ。だっていつ見てもハッとするほど顔がいいし、何を着ていても様になる。そのうえ優しさもあるから。  食器を片付けながらテレビのホームセンター特集をチラ見していた陽向はねえ、と凛子を抱いた東園に声をかけた。   「おもちゃ屋さんよりホームセンターの方がツリーあるかな?」 「そうだな。でも凛子はこっちに来ておもちゃ屋に行ったことがないから連れて行ってあげたいかな。あれもあるし」  あれってなんだろうと首をかしげた陽向に、東園が口パクでクリスマスプレゼントと教えてくれた。  そうだ、前々から凛子の欲しいおもちゃをリサーチしていたのだが、いまいち反応が薄く東園とどうしようか頭を悩ませていたのだ。  確かに、ものを見たら欲しいものがはっきりするかもしれない。  頷きながら週末は忙しくなりそうだなと思う。
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