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「お疲れ」
「陽向もな。風呂いいよ」
「あ、りんちゃんにお水飲ませてあげて」
「了解」
タオルを首に掛けたままリビングへ向かう東園に「上をすぐ着なさいよ。風邪引くよ」と声をかけて陽向は脱衣所のドアを閉めた。
入浴を済ませた陽向が戻ると凛子はリビングで鼻歌混じりに積み木をしていた。東園もちゃんと着替えを済ませている。いくら人に見せても恥ずかしくない身体であっても、いくら上半身だけであっても、この季節に長く裸でいるのはいただけない。
楽しそうに遊んでいた凛子だが、そのうちにふぁっと欠伸が出始めた。
「さあ、りんちゃんお部屋行こうか、今日はなんの本を読む?」
「キャンディの本!」
「よし、じゃあお片付けしようね」
凛子が積み木を片付け終わると、ダイニングでタブレットを眺めていた東園がこちらへやって来た。
凛子は行こうと伸ばされた東園の手を取り、空いた片手を陽向に伸ばす。三人、手を繋いで階段を上がる。早く帰宅できたとき、仕事が立て込んでないとき、東園は凛子の寝かしつけに付きそう。
凛子の部屋の本棚から凛子ご希望のキャンディがたくさん出てくるお化けの絵本をとってベッドへ向かう。
絵本好きの凛子の為に、布団で絵本を読むのが日課だ。
いつもは二人だが、今日は東園もいるので川の字だ。
部屋の電気を消しベッドサイドの照明をつける。
お化けと猫とともちゃんという女の子がお菓子が食べたくなり、キャンディをたくさん作るお話だ。
ストロベリー、マスカット、オレンジにレモン。
キャラメルにミルク、たくさんの種類のキャンディを可愛い形に作り上げていく。
カラフルなキャンディはそのうちにおうちからはみ出るほど出来てしまい、町のみんなに配ってみんなで美味しいね、と言い合いながら食べる。
ふと見ると凛子は目を閉じ規則的に呼吸を繰り返している。眠り始めたかなと思いながら物語を最後まで読んでいく。変なところで止めると起きてしまう事があるから。
本を閉じる頃にはしっかり眠ったようで凛子の向こうの東園と頷きあい、そっとベッドから出る。
陽向だけで寝かせるよりも東園がいた方が凛子の寝付きが良い。東園がいると心の底から安心するんだろうなと思う。
音を立てないようにドアを閉めて、陽向はふうと息を付いた。隣の東園は大あくびだ。
「陽向の声は聞いてると眠くなるな」
「子守唄でも歌ってあげようか」
「ぜひ頼む」
即答だったので冗談だよと吹き出した。
さあ、リビングの片付けが終わったらのんびりタイムだ。歩きながらうーんと伸びをする。
「コーヒーでも飲む?」
「ああ」
リビングに戻って東園へブラックコーヒー、陽向にはカフェオレを淹れる。
東園家のコーヒーメーカーは優秀で実はカフェラテも出来るのだ。三浦に教えて貰った。
ダイニングテーブルに置きっぱなしになっていたタブレットを起動させながら東園はありがとうとカップを受け取った。
「まだ仕事?」
「いや、もう終わった」
正面に座った東園は終わったと言いつつタブレットを眺めている。本当に忙しいんだろうなと思う。
「陽向、……ちょっと気になっていることがあるんだが聞いてもいいかな」
「なに?」
タブレットを消しテーブルに置いた東園を見ながら陽向は首をかしげる。
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