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一緒に暮らしてみて、東園がとても家庭的なのは分かった。思っていた十倍はいいやつだけど、確かにちょっと難しそうと思う。
だって平日は運転手の送迎があり、ここだって十分な豪邸なのに実家は比べものにならないほど敷地が広いと三浦が口を滑らせた。
さほど興味がなかったので陽向は東園が、東園家が何をしているか聞いたことがなく、具体的に知らない。中学の噂話程度の理解しかない。
しかし一緒に暮らしているのでさすがに興味が出てきた。まだ聞いてないけど。
ただ知っている材料から想像しても、東園家は相当な資産家で、お相手が誰でもいいはずはないだろうと予想できる。
それに加えてαの東園から見た運命の番は必然的にΩ。
α至上主義と言われる上流階級では、愛人にするにはいいがΩが結婚相手、とはならないだろう。それでも運命のつがいと結婚したいなら、Ω側のクラスも高さを要求されそうだ。
とびきり良家のお嬢様、かつ運命のつがいであるΩ。
この二つを満たす人間を探しだすのは骨が折れそうだし、実際見つかっても結婚を許してもらえるのか。
いろいろ考え合わせると東園の言う、「ちょっと難しいかな」がぴったりだ。
「まっ、まだ二十代だし、そのうち見つかるよ」
「……もう見つかってはいるんだけど」
「え、そうなの」
陽向は目を見開いた。
康平に続いて東園も運命とやらがいるのかと思う。
これはいよいよ夢物語と笑ってられない、のかも。
フィクションだと思いこんでいたから驚いたが、よくよく考えると恋愛、結婚の予定のない陽向にはあまり関係ない気がする。
東園も探そうと思えば大変だが相手がいるなら後は周囲の理解だけだろう。
陽向は「頑張れ」とエールを送った。
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