運命のつがいと初恋 ②

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 夕食後にクリスマスツリーの点灯式が行われた。  飾り付けのお手伝いをした凛子はすぐに点灯してもらえるとわくわくして待っていたのだが、東園に捕まり泣きながら風呂を終えて今、陽向の膝にいる。  右手はピンクの肌触りのよい生地のパジャマのお腹辺りを掴み、左手に猫のぬいぐるみを抱き、凛子は固唾を飲んで見守っている。  リビングを暗くしたあと、東園が電源を入れた。  赤、黄、緑、青、白の電球が代わる代わる点き、暗い部屋にツリーの輪郭が浮かぶ。     凛子はきゃあと叫び、陽向の膝から飛び降りツリーに近付き眺め始めた。  それを見ていた東園も嬉しそうにしていて勧めて良かったなぁと思う。  ほどなくリビングを明るくしたのだが、飾り付けを手伝った凛子はクリスマスツリーのそばを離れたくないらしく、今日の絵本はリビングで、ねずみの二人組の家にサンタクロースが訪ねてくる話にした。  ソファで寝てしまった凛子を東園が抱え寝室へ運ぶのを見送って、陽向はコーヒーを二杯分淹れ始めた。  そういえばショッピングモールで東園の欲しいものもリサーチしようと思っていたのだが、出来なかった。凛子が寝てしまい早めに帰宅することになったのでしょうがない。  この暮らしをみると、必要なものは揃っていそうだから実際なんでもいいのかもしれない。  カラフルなライトが点灯しているツリーをぼんやり見ながらクリスマスが終わったら正月が来るなと思う。  今まで冬休み保育と園の掃除、自宅の掃除など年末は忙しくしていて、帰省は大晦日の夜から一月二日までだったのだけど、今回はどうしようか。  もしかしたら、東園達は両親のいる外国……そういえば国名を聞いていなかった、いや聞いて覚えていないだけかもしれない……に帰省、というのか、会いに行くのかもしれない。  東園と凛子がいないのなら、陽向がここにいる必要はないので帰省を早めてもいいなと思う。その話もしないと、と考えていたらタイミング良く東園が降りてきた。 「ねえねえ、コーヒーでもどうぞ」  手招きすると東園は欠伸混じりに「ありがとう」と応え陽向の対面に座った。 「絵本の朗読聞いてると毎回ちゃんと眠くなるの、何でだろうな」  コーヒーカップを持ち上げた東園が微笑む。真正面から見ると整った顔をしているなと毎回きっちり思う。 「まだ寝ないで欲しいんだけど、ちょっと聞いておきたいことがあって」 「ん、何?」  眠たげな目が急に締まりじっと陽向を見つめる。  美形に間近で見られると心臓に悪い。しかも聞きにくいことを聞こうとしているのでなんとなく居心地が悪い。
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