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夜中に凛子の泣き声がした気がして、目が覚めた。
布団の暖かさに別れを告げ、廊下の明かりをつけず壁伝いに凛子の部屋へ行ってみると、東園も泣き声で目が覚めたらしくベッドサイドでまだ泣いている凛子を抱き、背中をとんとんと叩いていた。
暗めに調整されたライトがあたりをほのかに照らしている。
陽向に気がついた東園が凛子の顔が見えるように身体の向きを変えた。
凛子を覗き込むと涙で濡れた目が陽向に気づきまたじわりと涙が溢れてきた。
「怖い夢見たのかな」
「どうだろうな」
凛子が手を伸ばしたので今度は陽向が抱きかかえる。
身体を揺らし「りんちゃん、一緒に寝ようか」と聞くと、凛子は小さく頷いた。
「馨、部屋に帰っていいよ」
凛子の背中をとんとんしながら言うと、東園は首を振って凛子が寒くないよう陽向ごと毛布を巻き付けた。
しばらく立ってゆらゆらしていると、凛子の泣き声がやんだ。
抱いたままゆっくりとベッドに寝転がり、凛子をベッド面にゆっくりと下ろしてみる。
一瞬目を開いたのでもう一回抱くかなと思ったけれど、背中をとんとんしているとまた目を閉じた。
東園も凛子の隣に寝転がり陽向と凛子に布団を掛け、凛子の頭を撫でる。
両隣に人の温もりがあるせいか、凛子はすぐにすうすうと寝息を立て始めた。
凛子の向こうの東園は横向きに肘をつきこちらを見ていた。ミッションを終えた相棒に微笑みかけて「部屋に戻る?」と小声で聞いたが、首を振られた。
じゃあここに三人で寝るのかと思う。
認めたくないが華奢といわれる陽向や凛子はいいけれど、大柄な東園は狭くないのかなと思う。
つらつらそんなことを考えているうちに、布団の中が三人分の体温で温かくなってきた。
一人で寝るより温もるのが早い。
凛子の規則正しい寝息を聞きながら陽向も目を閉じる。ふと、髪を触られた気がして目を開くと東園の手が陽向に伸ばされている。
目が合った東園はいたずらが見つかった子どものような、あっと声が聞こえそうな顔をして陽向は可笑しくなった。
昔よく康平に髪をぐちゃぐちゃにかき混ぜられた、なんでも陽向の髪は柔らかくて触り心地がいいらしい。
触りたいならどうぞと思ったが声にする前に眠気に襲われまた目を閉じた。
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