運命のつがいと初恋 ②

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 年内最後の登園日、陽向は凛子と東園を送り出した後近くのデパートへ向かった。  帰省先の実家に集まる甥や姪に渡すプレゼントを購入するためだ。あと凛子が幼稚園で使うバッグやお弁当箱など足りない物を見る予定もある。  今は持っている物でいいが入学後は園規定の寸法の物を用意するように指示が来ている。  このあいだ幼稚園から持ち物表が来たのでそれを見ながら合う物があれば買う、なければミシンを使って作るか、手芸店に注文するか、かなぁと思う。  前の職場で発表会の衣装など作っていたのでミシン自体は使える。しかしレッスンバックやお弁当箱入れなどの小物は作ったことがない。  無かったら、無かったとき、また考えよう、と思いながら陽向はまず文房具と玩具のあるコーナーへ立ち寄る。  姪と甥には頼まれていたキャラクターの限定品を買い、同じフロアにあった丸くてふわふわした手触りの猫型ぬいぐるみも一緒に渡そうと購入した。抱きしめるのにちょうど良い大きさなので自分の分もちゃっかり買い足した。  そして乳幼児フロアに移って凛子の幼稚園グッズを探して歩く。もし買うなら同じメーカーの物を揃えた方が、なくしたときに見つかりやすいかなと思いながら商品を手に取り確かめていく。  こぐま幼稚園の指定した寸法はスタンダードな物で選べるくらいには商品があった。  可愛らしい柄のものも多く凛子が見たら喜びそうだ。ただ凛子の好きなランブーの物はなく、好きなキャラで用意するなら生地を買って作るしかない。  フロアを一周して、一度機嫌がいいときに凛子と一緒に来ようと決めた。  まだ入園まで時間があるし、どうしてもキャラクターが良ければ陽向が作ってもいい。  エレベーターで降りながらそこら中に溢れるクリスマスの飾り付けを目で追う。  明日はクリスマスイブだった、道理で平日なのに人が多い。  ついキョロキョロと眺め、この飾りは幼稚園で使えそう、これは使えない、と考える。今は使わなくてもいつか働ける幼稚園が見つかり再就職出来たらきっと役に立つ。  一階のエレベーター周りには化粧品コーナーがあり、バス停に向かうため陽向は化粧品コーナーを抜け正面ホールへ進む。  脇にクリスマスプレゼント用の女性小物、紳士小物の特設売り場があり、陽向は足を止めふらりと紳士小物の売り場に入った。  そういえば東園になにも買っていないな、と思い至った。このあいだ見ようと思っていたけどすぐ帰ったんだった。  マフラーのコーナーもあり、色んなタイプの物が並んでいる。  東園は黒いコートを着ている事が多いのでグレーが良さそうだ、普段見るからに上質そうな物を使っているので選ぶのに少々苦労する。  陽向はファッションに一家言あるような人間じゃないが、ま、気に入らなければ使わないだろう、要は気持ちだ、と思えるタイプなので、一番手触りの良い、陽向が自分が使いたいマフラーを選んで会計をした。  使ってくれるといいけど、東園は昨日から調子が悪いようだから。  あれ、と思ったのは昨晩だ。  風呂上がりなのに東園の匂いが濃く感じ、念のため体調はどうかと聞いたのだが元気だよと返ってきた。  体臭がきつくなるのは体調が悪いとき、と陽向は思っているので、おかしいなあ昨夜は首を傾げたのだが。  今朝、キッチンに立っていると、後ろから東園が陽向の肩に頭をもたせかけてきた。  そんなことは初めてでびっくりしてどうしたのか聞いたら、東園はなんでも無いと笑っていた。  しかしあれは相当に具合が悪かったと思う。今朝は更に濃厚で、うっかり間近で吸い込んだ陽向はしばらく頭の中まで痺れた感じが取れなかった。  東園は風邪でも引いたのかもしれない、最近寒いから首を温めたらちょっとはいいのかもと思う。  デパートから出て歩道を歩いていると強く風が吹いてくしゃみが出た。  あれ、もしかして自分まで風邪引いちゃったかなと思いながら陽向は帰路を急いだ。
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