運命のつがいと初恋 ②

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「陽向さん、具合悪いですか?」  夕方の幼児番組をただぼんやり眺めていた陽向は話しかけられてはっとした。 「ごめんなさい、ぼーっとしてた」  ソファのそばに立つ三浦を見上げ瞬きをした。  帰宅後からどんどん身体が重たく、熱くなっている。  テーブルでお絵描きをしていた凛子がクレヨンを置いて寄ってきた。 「熱計ってみます?」 「そうですね、済みません」 「ひーたんお熱? おむねもしもししましょうね~」  三浦が体温計を、凛子が人形用のお医者さんキットを持ってきた。体温計を受け取り計測している間、凛子は陽向の胸や腹に子供用の聴診器をあて頷いたり首を傾げたりしている。真剣な面持ちの凛子に「風邪でしょうか」と聞いてみる。 「お注射しましょうね」  どうやら診察の結果注射が必要と判断されたらしい。  腕を捲られ「いたくないよ~」と声かけ頂いたとき、ピピっと体温計が鳴った。  すかさず凛子が体温計を抜き取り、難しい顔で眺めたあと体温計を陽向に渡してきた。  37.1℃、微熱というほどもない。 「ちょっとお熱なので、お注射ですね~」  また、いたくないよ~と言いながら凛子はプラスチックの注射器を陽向の腕に当てた。   ちゅ~と言いながら注射器を揺らす凛子に「先生、すぐなおりますか」と聞いてみる。 「お注射したからなおりますっ」  力強く頷く凛子にありがとうございましたとお礼を言って陽向は注射の後を揉む真似をする。  微熱だけど、どんどん身体が重たく顔が熱くなっている。 「陽向さん、大丈夫? 私もう帰るけど」 「あ、はい、微熱でした。全然大丈夫です、心配かけてすみません」 「馨さんにお伝えしましょうか?」  陽向は目を見開いてとんでもないと首を振った。 「本当に大丈夫です。このくらいで連絡貰ったら馨が困っちゃいますよ! よし、動きます!動いたら元気になりますので」 「馨さんはなんでも知りたいんじゃないかと思いますけども……、本当に大丈夫? 無理はしないでくださいね」  心配げな三浦を安心させるため、しゃきっと立ち玄関まで見送った。が、三浦が去ったあと、陽向はめまいがして玄関に座り込んだ。  今までにない体調の変化に少し怖くなる。  身体のだるさ具合から考えると、もっと熱があっても良さそうに思う。  あと、だるいといえば発情期も考えられるが、今はその期間ではない。  陽向のように通常の生活が出来る程の軽い発情期でも一応少しはだるさがあり、周期くらいは分かる。  陽向の発情期は周期から考えるとあと一月以上先だ。今までに周期がずれた事はないので今日の体調不良は発情期ではないはず。
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