運命のつがいと初恋 ②

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「あ、それ馨にあげるやつ」 「え?」 「どうぞ、貰ってやって。クリスマスプレゼントに買った物だから」 「え? 俺の? 開けていい?」 「うん、遅くなってごめんだけど」  椅子に座って東園の置いたティーカップを引き寄せる。  甘い、フルーティな匂いがする。覗き込むと紅茶にしては薄い色合いだ。  目の前で東園が包みを慎重に開いている。陽向はテープ部分を破ってしまうので、丁寧だなと感心しつつ、淹れてくれたお茶を一口飲んでみる。 「香りが甘酸っぱい。これは紅茶かな?」 「さあ、ノンカフェインだとは聞いたがパッケージにはなにも書いていないな。イチゴの香りって言っていたよ。お、マフラー」 「うん」  グレーのマフラーを手に取ってじっと眺めている。よく見たら東園の目の色と近い気がする。 「お茶、冷めるよ」  そう高い物でもない、きっと東園はもっと質の良い高価なものを持っているだろうにあんまり長く眺めているから居心地が悪くなる。  そう喜んでもなさそうに見えるから違う物の方が良かったのかもしれないなぁと思う。   まあ、付き合いも短いししょうが無い、気持ちの問題だからなと割り切ることにする。 「ああ、そうだった。……これありがとう」 「ううん。あ、そういえば馨っていつから仕事?」 「明日からだけど、休みとろうか?」 「いやいや、全然大丈夫だから」  明日からは普通の日々が帰ってくるのか、と思う。  ちっとも休めた感じではなかったし、入院中、食事もままならずただでさえ痩せ型なのに更に数キロ減ってしまった。  しっかり薬を飲んで、しっかり食べる。次の発情期に備えなきゃなと思う。  そして東園に話しておかなきゃいけないことがある。 「あのさ、今回、休みに重なったから、三浦さんと馨の両親がいてくれて困ることがなかったかもしれないけどさ、」 「ああ」 「万が一って思いたいけど、次も、また次も体調が悪くなる可能性もあるから、次の人を探した方がいいような気がするんだ」 「次……、陽向はなにも心配しなくていいよ」 「心配するしないって問題じゃなくて。うーん、りんちゃんが困るだろって事」  東園は小首を傾げ陽向を見る。 「陽向が急にいないってのは、確かに困るだろうな。だけど、普通の家庭で、主に育児している人が突然病気に罹ることはままあるだろ。いつもいる人がいない、そんな状況も体験して子どもは成長していくんじゃないかな」 「……それは、まあ、そうかもだけど」 「短期間なら三浦さんや単発のシッターをんでもいいし、難しく考える必要ないと思っているよ」  微笑まれて閉口する。  しばらくお互いの目をじっと見合っていたけれど陽向が先に目をそらした。  なんだか負けた気分になった陽向はまあ、次はきっと大丈夫だけどねと小さく呟いた。
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