運命のつがいと初恋 ②

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 目覚ましより先に目が覚めた。  普段よりあっさり覚醒しているから、今日は調子が良さそうだと思う。  不調がなくても冬の朝は布団から這い出るのが難しい。  寒くて仕方ないのに布団に未練を感じないのは、気力がみなぎっているからだろう。  体力が有り余っているのかも、と思う。幼稚園で働いている頃より運動量は確実に減っている。  三浦が来たら、ランニングでもしようかなと考えながら着替えを済ませ一階へ降りた陽向はカーテンを開きエアコンを就寝モードから在宅モードへ切り替える。  コーヒーメーカーをセットして細かく刻んだ茹で済みニンジンとブロッコリーの入ったスクランブルエッグと凛子用に小さく切ったソーセージと大人用のソーセージを用意する。  凛子は今日、小さいおにぎりにしよう。   ラップに塩、ご飯、焼鮭を乗せてきゅっと縛る。そろそろ二人が降りてくる頃、だけど気配がない。  凛子の部屋に行ってみるとベッドに寝転がっている東園の背が見えた。 「おはよ」 「ああ、おはよう。そろそろ起こすかな」  東園の背後から覗き込むと案の定凛子がぐっすり眠っていた。  起こすのが忍びなかったんだろう。  分かるなあ、可愛いから、とにまにましてしまう。  身体を起こそうとした東園の邪魔になりそうだったので、陽向は咄嗟に身体をのけぞらせた。しかし思ったよりそのスピードが速く危うくぶつかるところだった。  至近距離で目が合いその瞬間、陽向の中でパチンとスイッチの切り替わるような感触があった。 「あ、ごめん」   東園に謝られ陽向は我に返り、同じように謝った。  優しめに起こしたのだが、まだ寝ていたかったのだろう凛子は大泣きし、東園が抱き上げる。あやしながら階下に降りてゆく二人の後に続きながら、陽向はさっき感じたなにかの正体を考え、一人首を傾げる。  引き続き身体は軽いし、気力も充実している。なにもおかしなところが無い。  確かにパチンとなにかが弾けたような感覚があったけれど、腹痛や頭痛もないし、勘違いだったのかもしれない。  目の前には泣いている凛子に手こずっている東園。  平日の朝に、ぼやっとしている暇はないのだった。  バタバタと朝食や着替えなどを済ませ、ようやく東園と凛子が家を出られるまでに準備が整った。  「いってきます」  あんなに泣いていたのに、元気に手を振る凛子にほっとしつつ二人を見送った陽向はテレビをつけ、いつものようにちょっと休憩を取る。そしていつもこののんびりした時間にカフェラテと朝食の残りを食べる。  東園はなんとしても朝食は一緒に食べたいと言うが、凛子が幼稚園へ登園する日はどうしたって陽向がちゃんと食べ終える時間は取れないのだ。
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