運命のつがいと初恋 ②

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 ぱちっと目が開いた。  朝に感じるとろとろの眠気もなにもなく、ぱちっと。  起き上がると手首にはまったゴムのタグがずれる。ブルーのそれを見て、あ、そうか、病院だったと思った。  思った途端、陽向は布団に潜り込んだ。  前回より酷い発情に陽向はこの一週間苛まれ、下着はずっと濡れっぱなしだし泣いて喘いで、眠っているときしか発情が収まっている時間が無かった。  死ぬかと思ったし、もうここから自分という存在がなくなればいいと思った。  今まで恥ずかしい瞬間がたくさんあったし、そのたびに消えて無くなりたいと思う事もあったけれど、今までの恥ずかしいってたいしたことなかったなと思う。  あああ、もう、自意識が大崩壊だ。  誰にも会いたくないしもうここから出たくない。  こんこんとノックの音と同時に隣の小机でスマホが小さな音を立てて震えたがどちらも無視する。 「三田村さん、大丈夫ですか」  聞き慣れた大川の声がするが、寝たふりしよう。メンタルが布団から出たくないと言っている。 「三田村さん、もう良さそうですねー」  布団の上からとんとんと叩かれ、渋々顔を出すと大川が「やっぱり起きてましたか」と苦笑した。 「す、すみません」 「みんなだいたい同じ反応するからですね。これはしょうが無いことだから気にしないでくださいね」  ゆっくり起き上がった陽向に大川が体温計を渡す。隣の小机でスマホが小さな音を立てて震えたが大川がいるので無視する。 「薬の種類を変えたのに、効かなかった気がして。抑制剤ってまだまだたくさん種類があるんですよね」 「種類はありますよ。詳しくは先生からお話がありますので」 「あの、僕みたいに運ばれてくる人ほかにもいますか?」 「いますよ。突発的に強く発情した方とか。抑制剤の効きにくい人もいますしね」  ピピと終了を知らせる電子音が鳴り、大川に渡す。  効きにくい人、陽向の場合は効きにくいではなく効かなかったのではないだろうか。  最初から発情全開で、抑えられている感じがなかった。それともあれでも少しは抑えられていたのだろうか。  どちらにしろ今後を考えると気持ちが暗くなる。  ご飯しっかり食べて下さいと言い残し大川が部屋から出て行くと、身体に蓄積された疲労を思い出す。  発情中はトイレとシャワーにしか移動しなかったいや出来なかったのに、腹部が筋肉痛だし、両足だるい。このあいだより更に身体がだるい。  腕を眺めてみると幾分、肉が落ちた気がするから頑張って食べなくてはいけないなと思う。  昼の食事が終わりうとうとしているとこんこんと扉を叩く音がした。  幾人が自分の醜態を見ているか分からないので、出来る限り人と会いたくない陽向が返事をしないでいると、「小森です、入りますね」と声がした。
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