運命のつがいと初恋 ③

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「本当に今日はありがとう。馨は命の恩人だよ」  何度もありがとうと言っているけど、何度言ってもいい足りない。東園は目を見開いたあと、小さく首を振った。  二階に上がる頃には陽向の欠伸が止まらず、視界もほぼ閉じかけていた。  さっき寝たのに、と思いつつ自分は今日本当に疲れたんだろうなと実感する。  一緒に上がってきた東園に「お休み」と言いつつ自分の部屋の扉を開くと、開いた扉を東園が押し締めた。  背後の東園に身体を向けると、「今日から陽向はこっち」と肩をおされ、え、と呟く間に東園の部屋に入れられてしまった。 真っ暗なのに、この部屋のどこにベッドがあるか知っている。 発情期に引き戻されたようで気恥ずかしさに身震いしてしまう。 「なんで」 「お互いに慣れないとだろ。やることがやることだけに」  やること。ほんの少し考えて思い至った事に全身がかあっと熱くなる。  少し開いた扉の隙間から入った光で東園の顔が見えた。微笑まれ引きつった笑いを返した。  なにも言葉を発せ無いまま東園におされベッドサイドまで進むと今度は手を取られベッドの中に引きずりこまれた。  枕は、寒くないか、などいろいろ聞かれながら慣れるってなんだ、とぐるぐる考える。  発情期のときはすごくしたくなるからその時してもらえればと思っていた。  αだってΩの発情にあてられると言うから簡単にできるものかと。  しかし東園自身が慣れる必要があるというならそうなのだろう。  陽向は東園がいない方に身体を向けて布団をぎゅっと抱きしめた。こうなったらさっさと寝るしかない。 「わ」  後ろから抱えるように密着されて思わず声がでた。  こんなコトされたら眠れないんですけど、と思うけれど東園も必死で慣れようとしているのかもしれないので言葉を飲んだ。  他人と一緒に寝るのがそもそもない事なのでとても眠れる気がしない。しかも当然だけど東園の匂いが染みついていてそわそわしてしまう。 「陽向、今日はゆっくり寝て明日から練習しような」 「……なんの練習?」  耳元で囁かれ身体がひくっと動く。耳と首筋がぞくぞくして、それが容易に消えないから困ってしまう。あんまり変な感じが続くからそっと耳をこすって感覚をけした。 「セックス」 「……あ、ああ、そう、」  人は驚きすぎると平常を取り繕うんだなとしばらく経って思う。  その間息も止まっていたので苦しくなったけれど、なんの音も立てたくなかったのでゆっくりと息を吸い込んだ。  もう今日は寝よう。頭に浮かんでは消える様々な疑問を一蹴して陽向はぎゅっと目をつぶった。
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