運命のつがいと初恋 ③

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 手のひらを撫でられるとなんだかこそばく背筋がゾワゾワッとするんだなと思う。こんな風に手をじっくり触られたことがなかったから知らなかった。  確かめるように触っている東園が手を止める気配はない。 「も、もう離して」  触られるところがこそばゆくて耐えられなかった。勢いよく引き抜いてほっとしていると今度は「髪触っていい?」と聞かれた。  頷くと後ろ頭に指を差し入れすくように髪を撫ではじめた。  これはこれで似たようなこそばゆさがある。しかしこそばゆさだけじゃなく、なんともいえない気持ちよさもあり、ずっと触られてもいいかなと思える。 「見た目、柔らかそうだけど本当に柔らかいよな。量は多くて細い」 「美容師さんみたいなこというね」  陽向が吹き出すと東園もだな、と呟いて笑った。 「昔、触ってみたいと思ってたんだ」 「そうなの? 気持ちいいからいつでもいいよ」  東園が触りやすいように背中を向け、頭を傾ける。おおと声を上げひとしきり触った後、あ、と東園が声を上げた。 「ずっとやりたかったことしていい?」 「ん? なに?」  振り向こうとした陽向は東園に髪をぐちゃぐちゃとかき回され「おわ」と変な声が出た。  少しそうしていた東園は手を止めた後、睨み付ける陽向に笑いながら「ごめん、ちょっと憧れてた」と言いつつ陽向の髪を手ぐしで直しはじめた。  こんなことに憧れを感じるってどういうことなんだと首を傾げる。  学生の頃とか結構したし、されてたけど。  ふと中学時代の、真面目くさった仏頂面をしていた東園を思い出す。  大人しいというか、寡黙な印象の東園だがαだしイケメンだし金持ちだしで、取り巻き的な友人も仲がいい友達も結構いたはず。    しかし誰が相手でもべたべたと仲良くしそうにない空気を纏っていたので、他人の髪をぐちゃぐちゃにして笑ってるところは想像出来ない。憧れ、なんて大層な物言いがなんとなく腑に落ちる。  放置していたせいで伸びた横髪を東園が耳にかける。こめかみあたりを触られ耳殻をなぞり頬を撫でられる。顎を掬われ近づく顔にぎょっとして身を固くした。 「キスしていい?」 「え」  キス、と聞いてかっと頬が熱くなる。  免疫のない陽向は単語を聞くだけで心臓がばくばくと五月蠅くなるが、鼻先にいる東園は目を細めほんのり笑みすら浮かべている。
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