運命のつがいと初恋 ③

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「陽向が出来そうにないと思うなら余計どんなもんか知っといた方がいいんじゃない? 発情期にやっぱりいやだって泣いても、いつも飲んでる抑制剤を止めた状態の俺だったらこないだみたいに救急車は呼んであげられないよ、多分。どうする? どうしてもいや?」  発情期のとき、したくて堪らなかったからいやだという自分が想像できないけれど、ただ触れ合うだけじゃないと聞かされるとちゃんと出来るのかちょっとだけ不安になる。  試してみた方がいいのだろうか。  本当に迷惑じゃないんだろうか。  首を傾げて陽向を眺める東園に陽向は顔を伏せて「いやじゃないです」と呟いた。  じゃあ部屋に行こうと囁かれたときなんとも言えない気分になった。  発情期の身体の疼きをまだ覚えているせいであのとき欲しかったものの実態を体験できる期待と、迷惑をかける罪悪感が体内をぐるぐる回る。  手を引かれて二階に上がり東園の部屋の前まで来ると今度は緊張で息がまともに吸えなくなった。  東園がドアを開き、陽向に先に入るよう促す。背中に手を当てられ押されるとなんだかエスコートされる女性になったようでむずがゆい。  部屋の明かりが一瞬点いたがすぐに薄暗くなった。  凛子の部屋も調光機能があったけれどここもなんだ。見上げると背後から絡みついてきた東園が「明るい方がいい?」と耳元で囁いた。びくびくと身体を揺らす陽向をからかうように耳の縁を舌でなぞる。 「……はぅう、耳、やめ、」 「気持ちよさそうだけど」 「や、」  体格が違うせいで陽向が身をよじっても東園はびくともしない。  舌の濡れた感触と吐息が首に掛かってぞくぞくする。  どうしてか下肢までむずむずして「ああ、」と声を上げてしまう。  自分でも聞いたことのない甘ったるい声であまりに恥ずかしく両手で口を塞ぐと「声、聞かせて」と手首を取られ腕ごと抱き締められた。  いちいち耳元で言うの反則じゃない、と思う。首元に東園の顔があるだけで他人の体温や掛かる息でぞくっとするのに、東園の声は低くて甘く囁かれると腰の奥に響く。
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