運命のつがいと初恋 ③

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 ひっと声にならない声をあげる陽向の生え際を東園の舌がなぞる。そのまま首の後ろまで来ると今度はうなじに鼻を押しつけた。 「ああ、甘いな」 「んん、」  うなじを舐められながらおかしいなと思う。Ωにとって生命線なのになぜかそこを東園に晒しても怖い感じがしない。何度もうなじにキスをされ、吸い付かれ、ちょっとした弾みで咬まれてもおかしくないのに止める事が出来ない。 「うぅ、あ、」 「陽向、いやじゃないの?」  いやかどうかと聞かれるといやでは無く頷く。 「そう。……キスしていい?」  心なしか嬉しそうに囁いた東園はこめかみや頬にキスを落とす。もうすでにいろんなところにされているのに、唇だけは聞くんだと思う。  陽向が頷くと東園は背後から抱いていた腕をゆるめ、今度は正面から抱きしめた。  胸に顔を埋め、陽向は息をいっぱいに吸い込む。  今までにないこってりした匂いだ。  いつもと同じ匂いではあるのに普段より濃密に感じる。  夜だから?   近いから?   昨日抱きしめられたときと明らかに違う。 「陽向」   名前を呼ばれて反射的に顔を上げる。あ、と思うまもなく唇が近づき重なった。  柔らかく、温かい感触に驚き、反射的に身を引こうとしたが後頭部に手を添えていた東園が許さない。  唇の感触を味わうようにふわふわと唇が重なっては離れ、キスってこんな感じなのか、ちょっと気持ちがいいかもと肩の力が抜ける。  きっと東園にも伝わったと思えるくらい動悸がしたけどほんの少しだけ落ち着いてきた。  離れてゆく顔を見上げ、こっちは心臓がおかしくなって、顔も多分真っ赤かだろうというのにそちらは随分涼しげなお顔で、と思う。  こんな時でも東園の顔面偏差値は高く保たれている、というかいつも見るより色気がプラスされて直視が厳しい。  じっと顔を覗き込むようにされて、耐えられず目をそらすと顎を指で持ち上げられまた唇が重なる。またふわふわと唇が重なりなんとも言えない感触にふっと笑みがこぼれる。  その瞬間待っていたかのように東園の舌がぬると口内に侵入してきた。 「ん、……んっ」  驚いて東園から離れようと胸を押すが頭と腰をしっかり押さえられ、またも逃げられない。差し込まれた舌が陽向の中を隅々まで舐めあげ、にゅちゃにゅちゃと音を立てる。  息つく間が分からなく、苦しくなってきた。胸を叩くと唇が離れ、ひゅっと大きく息を吸い込んでほっとする。しかし少しの間もなくすぐにまた吸い付かれた。
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