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12
時折触れる中の一部分が、レフィをさらに狂わせた。敏感な神経がまるで剥き出しにされているようで、気持ちがいいどころか辛くてたまらなかった。その辛ささえ、オメガの身体は貪欲に快楽に変えてしまう。何度も達ってっているような感覚はあるけれど、実際にはレフィのペニスはローレルの指に根元を押さえられて達くことができなかった。
「ああ、そろそろ大丈夫そうだ」
オメガの身体は柔軟で、経験がなくても快楽に浸れるという特殊体質である。
レフィは寝台に寝転がされた。体温が離れたことに心細くなって、違うと頭を振った。それに気付いたのか、ローレルはレフィの腕を自分の肩に導いた。
「自分がこれほど我慢できない質だと思わなかった。フィオ、痛かったら言ってくれ」
レフィの後孔を執拗に解している間、ローレルのペニスはずっと勃ち上がったままだった。二人のそれが偶然触れると、ローレルもたまらないほどの気持ちの良さを感じていたはずだ。
「クッ……!」
耐える声は低くレフィの肌を粟立たせる。どちらも辛いのに、レフィが音をあげるまで挿れようとせず平気な振りをしていたローレルの我慢強さにレフィは舌を巻いた。
「言ったら止めてくれるのか?」
アルファはもっと傲慢で自己本位なはずだ。レフィを可愛がってくれた義父だって、ベータと偽っていたレフィに求めるのは母の代わりに音楽を奏でることだけだった。疲れていても心配すらさせてもらえなかった。
ローレルはレフィを番にすることだけは譲ってくれないが、普通のアルファとは少し違うように思えた。
「フィオ……」
「できないのなら下手に気遣うのは止めてくれ」
それはレフィの本心だった。
「そうだな。ただの自己満足だな……」
寂しげな声は自分に言い聞かせるようだった。
「今から挿れる。お前を私の唯一の番にする。どれだけお前が嫌がっても……止めたりしない」
レフィの腹の中が蠢いたのは怒りのためではない。レフィの身体はアルファであるローレルに求められることに喜びを感じている。
「お尻の下にクッションを入れる。その後、私を受け入れてもらう」
目の見えないレフィが驚かないように、ローレルは一々行動を言葉にした。上げた腰を片手で支え、ローレルはレフィの狭間に自身を押しつけた。丸いもの、クルミのようなものが押しつけられているような感覚だった。飲み込めるような大きさではないような気がしたが、グイグイと押しつけられてレフィは息を飲んだ。クルミと違って長く、場所によって太さが違う。しかも硬くなく、温かい。
「ヒッ! んぁ! ロ、ローレル!」
ものすごい質量がレフィの中に挿ってきた。あれほど解されたのにギチギチで隙間など全くない。
「クッ……ッ、フィオ、力を抜けるか?」
苦しいのはローレルも同じようで、呻く息がレフィに届く。
「待って……」
レフィは止めていた息をそろそろと吐き出した。
「偉いぞ、そのまま……」
ギュッと抱きしめられ、レフィは深くなった繋がりに瞼をギュッと閉じた。
「んんっ……ひぅ……っ! あああぁぁあ!」
ローレルはレフィの脇に腕を差し込み、そのまま持ち上げた。上がった分は下がるしかなく、密着した身体はさらに近づき、途中までしか挿っていなかった凶器のようなものをレフィは全て飲み込まされた。
神経が焼き切れるような衝撃が脳天まで貫き、レフィは顎を仰け反らせて震えた。ガッチリと押さえ込まれたレフィには頭を動かすくらいしかできなかった。
「フィオッ!」
「アッ……ア……」
二人の間にあったレフィのペニスは長く抑えられていた快楽を放出し、ローレルの腹を濡らした。どれほど酷く抱かれても受け止めてしまうオメガの体質をレフィは身をもって教えられた。
「ひ、ひどっ……」
レフィは泣き言を漏らした。
「すまない、気が急いた……」
「動くな! オメガだからって……好きにされて……」
オメガであるために何度も悔しい思いをしたことがあるけれど、これほど辛かったことはそうない。レフィは泣き顔を見られたくないという矜持だけで涙を堪えた。
「違う! そうじゃない。早く自分のものにしたくて……」
「そんな言葉、信じられるか! あんたなんか見たこともない。会ったこともない」
「運命だと思った……」
「俺の運命はあんたじゃない……あんたは俺を買った好事家だろ。オメガでそれなりに具合がよければそれでいいんだ。目が見えないことなんて、逃げる心配もしなくて好都合なんだろ?」
「フィオ……」
ローレルはそれきり言葉なく、ゆっくりと腰を動かし始めた。レフィはローレルが言い訳をするだけ時間の無駄だと見切りをつけたのだと思った。
「ンッ……あ……」
あれほど辛かった体勢なのに、抱きしめられ腰を揺すられていると次第に蕩けるような快感が湧き上がってくる。
「やぁ、あ……」
ローレルの全てを受け入れた時に達ったレフィは、もはや自分の快楽をコントロールする術を失っていた。後ろは蠢き、ローレルを離したくないと絡みつき、締め付けているのを自覚していた。
レフィは、今ほど見えないことをありがたいと思ったことはない。ローレルは、嫌だと拒否し詰りながら搾り取ろうとするレフィを嗤っているはずだ。
見えなくて良かったと初めて思った。
「愛してる、フィオ」
熱い吐息が耳朶を打ち、レフィは覚悟した。
「兄様……っ」
ごめんなさい、待てなかったよ――とレフィがエルネストに想いをはせて名を呟いた瞬間、ローレルが奥のひくついていた部分をゴリッと押した。
「あっ! 止めっ――……ああっ!」
身体の奥に温かいものがまき散らされ、その衝撃でレフィも同じように達った。
「あああぁぁ……ン……う……」
首にアルファの牙が差し込まれ、所有の刻印を刻みつけられたことをレフィは痛みと狂いそうな悦びの中で知った。
もう、会えない……と、レフィは絶望の中で意識を失った。
「レフィ、愛してる。次に起きたら、もう抗性剤は効いていないから……何も考えずに抱かれて……。でも……どうして私を呼んだんだ……」
次に起きた時も、その次に起きた時もレフィはローレルに抱かれた。レフィは体力がなくあっという間に精も根も尽き果て、気絶するように眠りに落ちていった。
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