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お菓子との出会い(1)
エミリーの部屋は、この城の3階にあり。この部屋からは正門が見え。部屋の広さは、15メートル四方の部屋に、ベッド、衣装・衣類のタンス、化粧台に机と椅子。1人で住むにはかなり広い部屋。この部屋は以前、前王と前王妃が使っていた。
午前9時、エミリーは窓から正門を見ていると。扉をノックする音が聞え。扉が開き。そこには、3週間ぶりに帰ってきた前王。エミリーは前王の元へ駆け寄り。
「お祖父ちゃん、いつ帰って来たの? 会いたかった!」
前王に抱きつくエミリー。
「聞いたぞ。挨拶、派手にやったそうじゃないか」
「だって、私は、私なりの挨拶がしたかっただけなのに、お父様にはわかってもらえなかった」
「そうか、私なり挨拶か、それでいんじゃないか!? 型にはまるばかりでは窮屈だからな」
前王に抱きついていたエミリーは、抱きつくのをやめ。
「そう、それが言いたかったの、お父様に。そもそも、王女の自覚って何? 何なのよね……!? あっ! そういえば、新しい食材は見つかったの?」
「見つからなかった……。あと1ページ、あと1ページが何なのかわからない」
「あと1ページ!? 何なの、あと1ページって?」
「そのことなんだが、その前に。エミリー、すまなかった。誕生日おめでとう。今回の誕生日プレゼントは、特別のものを用意したから」
「えっ!? そうなの!? 今度はどんなご馳走なの?」
エミリーの誕生日がくると、毎回、前王特製の手料理が振る舞われていた。
「12歳のお祝いだから、いいことを教えてやろう……。このことは2人だけの秘密だからな!」
「わかった」
すると、前王は、この部屋にある化粧台の所に行き。何を思ったか、小柄な前王は、いきなり大きな化粧台を軽々横に動かし。エミリーは驚き。
「エミリー、この壁を見て見なさい」
エミリーは言われるがまま、前王の所に行き、壁を見ると。化粧台で隠れていた壁に、大人の親指くらいの穴が開いている。
前王は、その穴に人差し指を入れると。壁の板の一部が右側にスライドし、大人1人がしゃがんで通れるくらいの穴が開き。エミリーは驚き。
「お祖父ちゃん、この穴は何なの?」
「秘密の抜け道ってとこかな」
「抜け道!?」
エミリーはその穴を覗くと、中は薄暗く。ふと右側の壁を見ると、ランプがぶら下がっている。そのランプに火を灯す前王。
すると、前王はランプを持ち穴をくぐり、その後ろにエミリーも一緒に。ランプの灯りで左側に階段が見え、下へと続いている。人ひとり通れるくらいの幅で、周りは板で囲まれ、緩やかな階段。そこには手すりもいている。
「お祖父ちゃん、これって、何処まで続いてるの?」
「それは行ってみてからのお楽しみだな」
前王は、化粧台を元の位置戻し、空いた穴を元に戻し。2人は階段を下り始め。4階相当分の階段を下ると。平坦な道になり、しばらく歩くと。今度は、上へ続く階段が見え。 少し階段を上がると、引き戸があり。前王はドアを開けずに、エミリーに開けさせ。そこには驚く光景が。
「えっ!? ここって、お祖父ちゃんが言ってた、料理研究室!?」
「ようこそ、私の料理研究室へ!」
辺りには、鍋やフライパンがたくさん置いてあり。たくさんの食器に、大きな石釜が4つもある。調理器具の多さは城内の調理場以上。エミリーの部屋と比べると少しこちらの部屋の方が広い。エミリーは前王からこの部屋のことは聞かされていた。しかし、見ると聞くとでは大違い、驚いた。
この建物は、城の東側にあたる位置に独立してこの平屋が建っている。
王はエミリーに、この城の敷地さえも行かしてはもらえない。近くには、見張り小屋があり。行きたくても行けなかった。家来の目が厳しい。
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