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52.『雪は僕からの手紙』※
風に舞った雪が、ひらひらとコートの肩口に止まった。背の高い君とは目線が合わないから、僕は信号待ちのあいだ遠慮なく見つめている。
『雪は天からの手紙』と書かれた本には、美しい結晶の写真があった。それは気温や空気中の湿度で、様々に形を変える。
僕の胸のうちを小さなひとひらに託せば、いったいどんな形になるだろう。それを音もなく重さも感じさせずに、君の肩に乗せられたら。無造作にはらわれて溶けるその瞬間にまで、僕は思いをこめる。
「じっと見てんなよ」
君が前を向いたまま小声で言った。
焦って顔を戻せば、目の前に大きな黒塗りの車が停まっている。ピカピカのボディー越しに視線が絡んだ。
手紙が、届いたのだろうか。
その微笑みは、間抜け顔の僕に「受け取ったよ」と返事をくれる。
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めったに雪の降らない所にいるためか
『雪は天からの手紙』というフレーズを
小雪がちらつくたびに思いだします。
皆様も暖かくお過ごしくださいね。
(2024/1/25)
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