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58.2024/春の星屑 140字小説
課題文字は『細』です。
➀友だちの手のあいだを赤い毛糸がすいすい泳ぐ。さっきまで一本の細い糸だったものは、目の前で箒やちょうちょに姿を変えた。「一緒にやる?」
ぴんと張った三角にそっと指先を入れる。私の手に移動した糸はふにゃふにゃと歪んでしまう。
「大丈夫」
添えられた指が力をくれて、突然ダイヤマークが現れた。
②路地を歩いて看板に惹かれた建物に入る。言われるまま材料費を支払った。
「おにぎりが美味しいのは手で握るからです」
ビニール手袋をはめた先生の笑顔がまぶしい。
「食べる人を思い浮かべてくださいね」
そうか。だから母のおにぎりは心細さまで満たしたのだ。初めて作った私のおにぎりは少し塩っぱい。
《あとがき》
4月にコンテストへ投稿した作品です。
並べてみて、どちらも主人公が一言も発していない、と気づきました。もう一歩踏み込みたかった!
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