11章 本音

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 次に向かったのは、祖父母の家……羽倉家。  「うわ……ここも凄い埃……。」  中に入れば、同じく暖炉やピアノが置いてある、救助転生でも来たあのリビングがある。  あの時は炎も灯され、温かかった部屋は……既に冷たくて、埃とカビの香りしかしない。  「紅陽、じいちゃんとばあちゃんの遺品、どこやった?」  「あ、えっと……そこ、ソファの下。どうしても叔父さんとかに触って欲しくなかったから……透明なケースに入れて、そこに押し込んだ。」  凄惨な航空機事故で、唯一ほぼ全身が残った2人。何かしらが起きたらしいが、それは当時その場にいた者しか分かるまい。  勝輝が引き出したケースの中には、服や手帳など、必要最低限の荷物しか無かった。  そっと取り出した手帳は血にまみれ、外のクリアフィルム型のケースは溶けてしまっている。横につけられたボールペンも、ノック部分が焼け焦げて、ひしゃげてしまっていた。  「これだけで……どんな事故だったのか分かるな。」  勝輝の言う通りだ。よくこれだけの事故で……綺麗な姿で帰って来てくれたと思う。  そっと手帳を捲って行った時、あるところで手が止まる。目の前が滲んだと思った時には、もう遅かった。  「紅陽? どうし……」  勝輝の声は続かない。そっと見ると、勝輝も静かに泣いていた。  隅が所々焦げたページ。そこには……祖父が静かに遺した、最後の実況が記されていた。
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