11章 本音

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 『10:00 爆発音がした。出発から約1時間。何かあったのは事実。旅行は中止でいい。紅陽の元に帰らせてほしい。』  『10:03 突然落ちてきたのは酸素マスク。さっきから機体は横揺れや急降下を繰り返している。』  『10:09 今窓から地面が見えた。もう千里は気絶している。息苦しい。』  『10:12 もう帰れないかもしれない。紅陽許してくれ。』  『10:16 もうにどとひこうきにのりたくない』  10時20分の墜落に向けて、少しずつ乱れていく筆跡と、短くなる文章……最後は、カタカナだけだった。  『10:18 アサヒ カツキ アイシテル』  涙が止まらない。拭っても拭っても、溢れてくる。  『もう二度と飛行機に乗りたくない』  こんなことを思うまでの恐怖を体験していたのだ。  地面が見えながら、横揺れと急降下を繰り返す飛行機の中で、ひたすらに運命と向き合うしかなかった祖父が、あの時確かに空の上にいたのだ。  「や、だ……なん、で……なんで……!」  1人で遺体を確認したあの時、本当に穏やかな顔だった2人。その理由は分からないままだったが、やっと分かった。  そう、祖母は気絶していて、祖父は運命を受け入れていて。ただ、それだけだったのだ。  「紅陽……おいで……。」  勝輝に抱きしめられ、涙が止まらないまま、声を上げて泣き叫んだ。  「嫌だ! みんな死んだなんて、そんなの夢だって! そう信じて生きてきたのに! もう……もうみんないないのかよ!!」  「紅陽……」  「嫌だ、嫌だ嫌だ! 認めたくない……!!」  もう家族がいない。勝輝しかいない。その現実が、荒波のように押し寄せてくる。  救助転生の時に、あんなに笑っていた父さんも、母さんも、姉貴も、日向さんも、じっちゃんもばっちゃんも……みんないない。  ただ黙って、強く抱きしめてくれる勝輝。今だけは、勝輝がいてくれて本当に良かったと思った瞬間だった。
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