11章 本音

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 家に帰ってから、遺品を見つめたまま呆然と座り込む。  (父さん、姉貴、日向さん、母さん、じっちゃん、ばっちゃん……)  みんな、死んだ。目の前から、呆気なく消えて行った。  救助転生で見た姿は、死ぬ間際の姿と言っても過言では無い。あの時、助けに行った自分は現実にはいなくて、あのまま全員命を落とした。  エアコンの風に煽られたのか、アルバムの薄い紙が捲れ、家族と写った写真が次々に目に入ってくる。  笑顔の姉と勝輝、母と姉が着ている着物、父と勝輝の満面の笑み、穏やかな微笑みを浮かべた祖父母……その中で、心底楽しいと言わんばかりの顔で写っている、笑顔の自分。  どこだろう。どこから歯車は狂ったのだろう。  「紅陽、大丈夫か?」  勝輝が横に座ってくる。今は来るな、と言いたいが、声が出ない。  ずっと溜め込んでいた暗い気持ちを、衝動的に勝輝へぶつけてしまいそうで、でも動きたくても気力がわかなくて。  「紅陽、こっち見な。」  そっと視線を動かすと、勝輝が優しい目で、でも真剣な表情で、こちらを見つめていた。  「全部吐き出してみろ。俺を殺してやりたいとかでもいい。何でもいい。親戚のことを貶したっていい。全部、お前が抱えてきたものをぶつけるんだ。」  勝輝は、絶対に怒らない。何故か、そう感じることが出来た。  「いいの……?」  「当たり前だ。これは……俺のケジメってやつだ。お前から本音を聞いたことが無かっただろ。ずっと、お前のことを放置して音楽活動をして、こうしてお前を壊しちまった。だから、何でも言え。」  グッと手を握りしめた。言えば、楽になるのかもしれない。そんな思いが、頭の中を満たしていった。
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