11章 本音

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 「……これで、全部か?」  勝輝の静かな声に、小さく頷く。  全て話した。親戚のこと、家族の死、勝輝への恨み、音楽へ向けていた情熱の冷め……全てを。  何で俺を置いて行ったんだ、お前さえいれば……ずっと言いたかった言葉は、どうしても出てこなかった。  「そうか……本当に、色々と済まなかったな。」  首を横に振る。そう言ってほしかったわけじゃない。ずっと溜め込んでいた本音を言ってくれと、そう言われたから言っただけ。  「紅陽」  勝輝の声に顔を上げると、先程までの穏やかな顔からは一転、苦し気な、寂しげな目で、宙を見つめる勝輝がいる。  「俺が……お前をどうやって見つけたか、知りたいか?」  驚いて勝輝を見る。曖昧に頷くと、勝輝の視線が床に移動した。  「俺は、すぐにお前を見つけたわけじゃないんだ。すぐにお前の教授と出会えたわけでもない。最初は……普通に母さんも望美も、みんないると思って帰って来た。」  勝輝が帰って来たのは、あの学内コンサート間近の日。既に姉どころか、祖父母すらも消えていた時だ。  「俺はな、最初、何も知らずに須川家に行ったんだよ。俺が帰国した日は日曜日、教師だった母さんも紅陽も、休みだと思っていたからな。」  勝輝が知っていたのは、父の死だけ。その後、すぐに祖父母の家に行き、養子縁組をして羽倉姓となった勝輝。流れるように名立音大に合格し、そのまま海外へ飛んだ。  結局、勝輝は帰ってくるなり、すぐに1人暮らしを始め、最終的には海外で活躍するピアニストとなり、そのまま誰の死も知らないままで、過ごしていたのだという。  呆然と聞いていると、勝輝が溜め息と共に、手で目元を覆った。  「あの日……学内コンサートの2週間前だな。お前に会う、ほんの2日前ぐらいに、日本に帰って来たんだ。」
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