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どこをどう通ったか分からないまま、辿り着いたのは叔父の家。
震える手を抑えきれぬままインターホンを鳴らし、出てきたのは従兄弟の樹だった。
「まさか……勝輝?」
樹の声に頷く。成人しているであろう樹の顔は、すっかり大人びている。最後に会ったのは、恐らく父の葬儀の時だった。
「ちょ……っとだけ、待てるか? ここで話すのはまずいんだ。」
訝し気に頷くと、すぐに樹は着替えて、近くの公園へ連れて行ってくれた。
公園は誰もいない。座って話そうと、ベンチを探していた時、風の中に樹の声が響いた。
「お前……今まで何してた。」
「え?」
なんでそんなことを、と言おうとした時、振り向いた樹に殴られた。
不意打ちを食らい、そのまま後ろに倒れこむ。何をするんだ、と言おうとした瞬間、樹の怒声が響き渡った。
「今更……何しに戻って来たんだ! お前のことだ、紅陽に会いに来たんだろ!?」
訳が分からない中で頷く。
「どこまで知ってんだ。」
「……母さん、じいちゃん、ばあちゃん、望美が死んでること。」
口に出すと、絶望が増す。紅陽以外、もう家族がいないのだ。じっと樹の燃えるような目を見ていると、樹の口が動いた。
「もう、紅陽はいないよ。」
「……は?」
「6年前に家を飛び出して、そこから行方が分からねぇんだ。親父も捜そうとしないし、遺品も大量に置いてったからさ……帰るつもりも無いんじゃねぇかな。」
呆然と聞く。紅陽は、理由も無しに家を出る人じゃない。それは分かっている。
「ま……あの言葉、聞いちまったんだとしたら、そりゃ無理だろうな。」
食いつくように聞いた瞬間、初めて紅陽の飛び出した理由が分かった。二度とお前らとは関わらない、と吐き捨て、すぐに走り出した。
涙を必死に堪え、唇を噛みしめた。
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