11章 本音

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 「……そこで、俺は宮音音楽大学に行って、アッカルドさんに会ったんだ。アッカルドさんも驚いていたけど、お前のことを教えてくれて、望美のことを覚えてくれていた。」  あまりの話に、何も言えないでいるこちらを見た勝輝が、ふっと笑う。  「それで、本当なら学内コンサートの時にお前と面会するつもりだったんだけどな……あの雨の日、エントランスで望美にそっくりな演奏が聞こえて……見たら、お前だったんだ。」  そうか、それで……あの時、飛び入りで演奏に参加したのだ。勝輝も、何が何だか分からないままだったに違いない。  「最初……俺を見つけた時、どう思ったの。」  「そうだなぁ。」  勝輝が困ったように笑ってから、こちらと目を合わせる。  「最初は、本当に生きてた、って思った。あんな状況で、ちゃんと生きてる方が凄いと思ってたからさ。でも……その後に溢れたのは、後悔だったよ。」  勝輝の目に涙が浮かび、音もなく滑り落ちたのが見えた。  「お前が生きていたことは嬉しかった。でも……どれほどの苦労をさせたんだろうって。ショパンコンクールのことを聞いた時から漠然としていたことが、一瞬でハッキリと見えた気がしたんだ。」  勝輝がわずかに息を吸うと、頭を下げてきた。  「本当に、すまなかった。辛かっただろ、本当に、言葉じゃ言えないぐらいに辛かっただろ。俺は……絶対に死なない、約束する。今ここで、誓う。」  恨み事を言いたい気持ちなど、消え失せて……思わず勝輝に近づいていた。そっと抱き締めてくれる勝輝と、その温もりの中で、ひとすじ涙が流れ落ちた。  「……約束だぞ、馬鹿兄貴。」  「もちろんだ。これから、2人で……1からやり直していこうな。」  頷く。不思議と、安心している自分がいた。
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