君を救いたいって言ったら、どんな顔するだろう

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仕事帰り、駅前でチャラそうな若者にもらった割引券に惹かれ、なんとなく興味本位で足を運んだ異様な空間。 キラキラガヤガヤと五月蝿い華やかなスペースとは一線を画したエリアで、“ショーケース”に入れられ、まるでモノのように扱われている君に出会った。 ああやって視線を集めて、客に金を使わせ、一時の快楽を与えるのだ。 ---客引き…か。まるで“遊郭”だな。 このような“商売”は、形を変えながら古来から存在している。 似たようなモノは、温泉街などで、酔客相手にしているものもあるし、夏祭りなど身も心も開放的になる場所で、公然と路上で行われているケースもある。 これらの“商売”が現代の法律でどう扱われるのか、無学の私には分からないが、現代でも廃れずに新たな形を生み出していくということは、法に触れていないのギリギリのところなのかもしれない。 だが法的に問題ないとはいえ、いずれも“金で悦びを買わす”ことには違いない。 仕切りの向こうで、じっと微笑みかける君と目が合った。 “ここから出して” 微笑みの向こう側から、そんな声が聞こえたような気がした。 私は助けを求めるかのような彼女の視線に、年甲斐もなく、胸を突かれた。 一目惚れ? この年齢で? 私には家庭もあり、会社ではそれなりの地位にもある。 万が一バレたら…。 会社では後ろ指を刺されるだろうし、家庭では居場所を失う可能性もある。 妻とはもう冷え切ってしまっていてどうでもいいが、娘は…、娘だけには知られたくない。 理性と欲望の狭間で葛藤した私は、最後、私は目を閉じるようにして誘惑を断ち切り、その場を後にした。
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