4人が本棚に入れています
本棚に追加
「今なら安くできるんですよ。本日ご契約いただければ、さらに特典がつきます」
「はあ……特典ってなんでしょう……」
ああ、私のばか。
質問で返したらますます話がややこしいことになってしまう。
そうは思っても後の祭り。玄関先に立つインターネット回線の契約を持ちこむセールスマンは目を輝かせそのバッグから1枚のチラシを取り出した。
「ただいまご契約いただくと、こちら初月無料とさせていただきます」
初月無料。
あまり魅かれる特典ではない。
そもそもインターネット回線は現時点別のところにすでに契約済みで、その手続きすらもいろいろ面倒であったのを思い出す。回線の引き換えを行うのにあの苦労をまたするくらいなら、ひとまず今のままで十分だ。料金だって、今のところ許容範囲内だし。
断らなければ。
そう思い、手汗のにじむ手のひらをぎゅっと握る。あの、と。そう口火を切ったそのときだった。
「どうもどうも。今、あまりそれに関しては特段見直そうとは思ってないんだ。他を当たってくれるかい」
私の肩に置かれた大きな手。視界に落ちる高く細い影。
突然のあまり、声が詰まった。
最初のコメントを投稿しよう!