NO!が言えない私のひみつ

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「ああ、旦那様でしょうか?」 「そうだ。とにかくそれは大丈夫だ。もうすでに別のものと契約してるから。どうぞお引き取りを」 そう言って、物言いたげなセールスマンを玄関先に追いやり、男はその戸を閉めた。  あまりの速さで事が運んだこと。  なにより、私の部屋にいるはずのない人間がいること自体がてんでおかしい。  っていうか、旦那様と聞かれて、そうだって何??私、まだ結婚した覚えなんてないんですけど。それどころか、彼氏だっていないんですけど。 「聖は相変わらずすっとぼけが過ぎるなあ。まあ、それが良いところではあるんだが」  そう言うなり、私の方に振り返りその長身をかがめ、私に視線を合わせてきた。  視線が交差する。  すべてを見透かすような色素の薄い黒の瞳に、私は既視感を覚えた。 艶のある、それでいてクセのある黒髪。この季節なのに、白のポートネックTシャツにチノパンといういで立ちの男は、どうも季節の先取り具合が半端ない。 幼顔のわりに低い声でしゃべる男に、私が思ったことを正直に言います。 何このイケメン。  どこから湧いてでてきたんですか。  「……あの、すいません泥棒ですか?」  「盗人だったら聖を助けるような真似をするわけないだろ」  「……じゃあ、ストーカー……とか?」
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