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「そう見えるかい?」
「それ以外ちょっと考えられないというか……」
玄関先で、私と謎の黒髪の男は向き合いながらくだらない会話をする。
なんというか、顔が美しすぎて、泥棒でももう少し拝んでおきたいなという小さな欲が生まれる。
本当に自分で言うのもあれだけど、危機管理能力が欠けていると思う。補い方なんてあったとしても私はわかんないけど。
男は両掌を握って開き、その感触を確かめてから笑った。
「なかなか見事じゃないか?な、どうだい?」
「はあ……ちょっと言ってる意味が分かりません」
興奮気味にその美顔を私に近づける男に戸惑う。いったいなんだっていうんだ。
「とりあえず、助かりました。ありがとうございます。お礼に警察は呼ばないでおくので……黙って、何もせず出ていってもらえませんか?ここには今怪我をした動物がいるんです」
そう言って、私はリビングに足を向けた。
「わかってるさ。ここにいるだろ」
そういって、自分の胸に手を当てる男に、私は二度目の訝し気な視線を送った。
本当に顔はいいけどこの男は何を言っているんだ。
……今さらだけど、名字はともかく名前を知られているのすら怖くなってきた。
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