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リビングに続くドアを開け、ベッドの横を見る。そこにいる小さな狸が心配だった。しかしいるはずの姿がないことに、私はひどく動揺した。
「え!?狸くんいない!?」
慌ててその場へ駆け寄り、ベッドの掛け布団を剥がし枕を放り投げ狸くんを探す。音にびっくりして隠れているのでは、と思ったのだ。
しかしそれでも見つからないので、浴室脱衣所トイレとあちこちの小部屋を探し回った。
「いない……」
いるはずの狸はいないわ、いなはずのない男がいるわ。とんでもない休日だ、と床に崩れ落ちる。
いや、そうじゃない。狸くんは大丈夫なのだろうか。まさか、さっきのセールスマンが来てドアを開けたとき、気がつかぬうちに飛び出したのでは――?
そう思ったらいてもたってもいられなくなり、私は玄関へと戻った。
「おいおい、どこへ行く」
「狸くんを探しに!さっきドアを開けた拍子に外に出たのかも」
まだいたのかこの男。
てっきりもう出ていってくれたのかと思っていた。
「きみは本当にしょうがないな。……ほれ、よく見ろ」
男が私の肩に手を置き、そしてその視線を自分自身に向けた。その途端、クラッカーのような軽快な音がして白煙があがった。
「!?」
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