NO!が言えない私のひみつ

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 夜通し狸の様態をみていた私。しかし気がついたら朝だったので、不可抗力ではあるが抗えない睡魔に負けたのだと知った。    飲みかけのままテーブルに置かれた缶チューハイ。もう炭酸は抜けているだろう。  正直この缶チューハイ、ずっと気になって飲みたいと思っていた割には、期待にそぐわぬ味だった。どうしよう、あと2缶もあるのに。  こうやって、口に合わない場合のことを考えられないのが私の欠点。そして、1回で学ばない私は全くナンセンスだ。  時計を見ると、時刻は10時前。普段の私らしからぬずいぶんな遅起きは、きっとベッドで眠れなかったからだと思う。  ベッド横を見やると、狸は変わらず眠っていた。すぴー、すぴー。小さな呼吸の音が可愛らしい。  随分大人しい狸だな。昨日だって無駄な抵抗はしなかったし。  私は狸のお顔を覗き込みながら思った。  足の傷以外にもどこか怪我をしているだろうか。そう思ってかけていたブランケットをめくりあげ、その体躯と四肢をひとつずつ丁寧に見て回っていた――そのときだった。
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