NO!が言えない私のひみつ

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ピンポーン。  鳴り響くインターホン。  休日にここへやってくる来客なんて知れている。分かっていた。けど、忘れていた本当に。  きた。きてしまった。  そう私は背筋に伝う妙な汗を感じて身を固くした。  のそのそと重い足取りでインターホンをつなぐ。どちらさまですか、その言葉の返事は期待を裏切らない、恐れていた者だった。  余程居留守を使おうと思ったが、ここで逃げてもきっとずっと追いかけまわされると思ったら憂鬱でしかない。  渋々私は玄関の戸を開いた。  「こんにちは。お忙しいところすみません。先週はありがとうございます」  とって貼り付けたような笑顔が私を出迎える。髪をワックスで撫でつけたその様子は、働いている人のそれだった。  すいません、と思うなら来ないでよ。そう言いたい気持ちを飲み込んで、私は苦笑した。  インターネット回線の契約を勧めるセールスマンは、先週と同じように丁寧な、かつ強引な口調で私を誘導していく。  「どうでしょう。考えて頂けたでしょうか?スマホやパソコンをお使いでしたら、やはりお勧めです」  そう言って先週私にくれたものと同じチラシを一から解説していく。否が応でも覚えてしまったその契約内容に、右から左へと聞き流しながら私は相槌を打った。 ……いや、相槌を打つ前に、けっこうです、と断れればすべて解決する。するのに。  でも、それが私にはどうしてもできない。  なんとも情けない話である。
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