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「家族だから、見せたいのよ。マサトが作るイベント」
病気の事には触れないまま、私は語気を強めて言った。
「俺がイベントを作るんじゃないよ。出てくれる人達が作るんだ。俺がやることと言えば、オファーして、それをうまく組み合わせて、より良く見せるプログラムにするだけさ」
フォカッチャをデミグラスソースに浸しながら、マサトはそう答えた。私はその事について、もう、それ以上何も言えなかった。
「……ナル、手が空いたみたいだから。呼んでくるね」
「……ああ」
マサトがモグモグと食事し始めたのを見送ると、私はまた厨房に戻った。
結婚して、5年が過ぎた。特に旦那に対して文句も無いし、子育ても大変ではあるけど、私はささやかな幸せを感じる日々を過ごしていた。
そんな時に、マドカからマサトの病気と同窓会について聞いた。私が力になってあげられることは、何もなさそうだったけど……マサトを、応援したかった。記憶しづらくなって、過去の事も忘れてしまうかもしれない彼が残そうとしているものを、この目でちゃんと見てみたかった。
自分には関係ない。
そう思う同級生が少なくないとしても、私にとってのマサトは特別だった。きっと、ナルとマドカにとっても……。だから、彼を応援する2人のためにも、マサトには同窓会ライブを成功させてほしかった。
それがきっと、私たちを待つ過酷な運命に、何かしらの光を与えてくれるような……そんな気がしていたから。
Second feel
—end
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