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「近所のバイクショップで、アルバイトしてるよ」
「……そうか。昔から、バイク好きだったもんな」
「ああ。昔、サチを後ろに乗っけて事故りかけてからは、運転はご無沙汰だけどな」
マサトは苦笑いしながら答えた。
「そういえばサチの奴、思い当たる奴に片っ端から連絡してるみたいだぜ。マサトが同窓会ライブイベントするらしい、って」
地下鉄の構内に入る下り階段へ差し掛かろうとした時、ナルが思い出したように口をつく。
「確かに春頃にやるとは言ったけど……相変わらず気の早い奴だ」
「ありがたいことじゃないか。どんなイベントでも宣伝は大事だぞ」マサトの言葉に、僕は階段を降りながら続けた。「それで、お前が東京で知り合ったアーティストさん達には、もう話はしてるのか?」
マサトはタバコの煙を吐き出しなら、携帯灰皿に吸い殻を突っ込んで言った。
「ああ、こっちへ戻る前になんとなくは話してあるんだ。……近々そのアーティストチームのイベントがあるから、オファーがてら見に行こうと思ってる」
「東京でか?」
ナルが口をはさむ。
「いや、県内でだ。もともとこっちの人達なんだよ。関東を広く拠点にして、活動してる。海外にだって、遠征してるんだぜ」
アーティスト集団、と言われてもピンと来なかったが、精力的である事は間違いなさそうだ。
「すげぇな。そういう芸術的な事を生業にしてる人達って、尊敬するよ」
僕は素直にそう思って言ったが、マサトは否定した。
「いや、食えてる人はチーム内でもほんの一部さ。俺からすれば物凄い力のある人達ばかりだけど……そんな、甘いもんじゃないらしい」
僕はそれを聞いて、耳が痛かった。曲がりなりにも音楽でプロを目指そうとしていた時期があったから、その言葉の重みは嫌という程わかる気がしたんだ。
「楽しみだな。そんな人達とソウタ達のコラボ」
切符を買いながら、ナルが嬉しそうに言う。
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