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「お待たせしました。生中とウーロン茶、枝豆とピリ辛きゅうりになります」
ちょうどその時、さっきの女性店員さんが注文した品を持ってきた。
「ありがとう。……とりあえず、乾杯しようぜ」
ウーロン茶を受け取ると、ナルがジョッキをこちらに近づけて言う。
「そうだな。……乾杯!」
僕はジョッキをカツンとナルに合わせると、勢いよくビールを流し込んだ。
ゴク、ゴク、ゴク、と喉を鳴らし、ジョッキをテーブルに勢いよく置く。
「くはー。うまいっ。帰ってきてから初めての酒だ」
僕が続けざまにジョッキを傾けようとした時、ナルが呟いた。
「独りよがりなんかじゃねぇよ」
「……ん?」
僕は一口だけビールを飲むと、再びジョッキを置いた。
「お前は昔からさ、水みたいな生き方だったよ」
「……水、だって?」
僕が聞き返すと、ナルは頷いてからさらに言った。
「何かにぶつかっても、流れを変えてまた進んでさ。誰かが困ってたら、そこに向かって手を差し伸べた。誰かとトラブっても、気にしないで水に流してさ。友達同士の中に緩やかに入ってきて、間を取り持ってさ。いつも、穏やかだった。……まるで、水みたいな奴だと思ってたよ、昔から」
僕はそれを聞いて、なんだか妙に恥ずかしくなって笑ってごまかす。
「水みたいな奴、か。……はは、詩人だなナル」
しかし、ナルの顔は真剣だった。
「そんなお前が、心に感動を伝えることのできる仲間達の姿を、同級生に見せたいんだろう?誰かが、それをお前の独りよがりだって言っても、違うね。って言ってやるさ俺が」
ウーロン茶をビールのようにグイと流し込んでから、ナルは続けた。「お前が見てきたもの、受けてきた感動を誰かに伝えたいって気持ち、よくわかるよ。俺だって、叶うならそうしたい。だけどその方法なんて、なかなか浮かばない。それは、とても難しいことだよ」
僕はもう茶化す事もできず、黙って聞きながら3口目のビールをゴクリと飲んだ。
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