Fourth feel—マサト

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「お待たせしました。生中とウーロン茶、枝豆とピリ辛きゅうりになります」  ちょうどその時、さっきの女性店員さんが注文した品を持ってきた。 「ありがとう。……とりあえず、乾杯しようぜ」  ウーロン茶を受け取ると、ナルがジョッキをこちらに近づけて言う。 「そうだな。……乾杯!」  僕はジョッキをカツンとナルに合わせると、勢いよくビールを流し込んだ。  ゴク、ゴク、ゴク、と喉を鳴らし、ジョッキをテーブルに勢いよく置く。 「くはー。うまいっ。帰ってきてから初めての酒だ」  僕が続けざまにジョッキを傾けようとした時、ナルが呟いた。 「独りよがりなんかじゃねぇよ」 「……ん?」  僕は一口だけビールを飲むと、再びジョッキを置いた。 「お前は昔からさ、水みたいな生き方だったよ」 「……水、だって?」  僕が聞き返すと、ナルは頷いてからさらに言った。 「何かにぶつかっても、流れを変えてまた進んでさ。誰かが困ってたら、そこに向かって手を差し伸べた。誰かとトラブっても、気にしないで水に流してさ。友達同士の中に緩やかに入ってきて、間を取り持ってさ。いつも、穏やかだった。……まるで、水みたいな奴だと思ってたよ、昔から」  僕はそれを聞いて、なんだか妙に恥ずかしくなって笑ってごまかす。 「水みたいな奴、か。……はは、詩人だなナル」  しかし、ナルの顔は真剣だった。 「そんなお前が、心に感動を伝えることのできる仲間達の姿を、同級生に見せたいんだろう?誰かが、それをお前の独りよがりだって言っても、違うね。って言ってやるさ俺が」  ウーロン茶をビールのようにグイと流し込んでから、ナルは続けた。「お前が見てきたもの、受けてきた感動を誰かに伝えたいって気持ち、よくわかるよ。俺だって、叶うならそうしたい。だけどその方法なんて、なかなか浮かばない。それは、とても難しいことだよ」  僕はもう茶化す事もできず、黙って聞きながら3口目のビールをゴクリと飲んだ。
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